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seagull
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seagull
2009-05-17 13:35
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5月5日
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翌朝(よくあさ)。俺(おれ)は過(す)ごし慣(な)れた部屋(へや)にいた。
春原(すのはら)「ふぅ…」
朋也(ともや)「おかえり」
春原(すのはら)「ただいま」
春原(すのはら)「って、おわっ!
誰(だれ)かいるっ!」
朋也(ともや)「俺(おれ)だ。今更(いまさら)驚(おどろ)くな」
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)…」
春原(すのはら)「僕(ぼく)は…朝(あさ)だけは、穏(おだ)やかな時間(じかん)が約束(やくそく)されていると信(しん)じていたんだ…」
春原(すのはら)「朝食(ちょうしょく)を食(く)ってきて、こうしてコーヒーを入(い)れて、部屋(へや)に戻(もど)ってくる」
朋也(ともや)「俺(おれ)のも入(い)れてくれ」
春原(すのはら)「そして小鳥(ことり)のさえずりを聞(き)きながら、コーヒーを飲(の)む…」
朋也(ともや)「俺(おれ)のも入(い)れろって」
春原(すのはら)「朝(あさ)だけは、そんな僕(ぼく)のささやかな幸(しあわ)せが続(つづ)くと思(おも)ってたんだ…」
朋也(ともや)「つーか、おまえのをくれ」
ぶつぶつと何事(なにごと)か呟(つぶや)き続(つづ)ける春原(すのはら)の手(て)からコーヒーカップを奪(うば)い取(と)る。
ずずー
朋也(ともや)「ん、案外(あんがい)うまいな」
春原(すのはら)「………」
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)、てめぇを今(いま)ここで、ぶっ殺(ころ)ーーーーーすっ!!」
朋也(ともや)「まぁまぁ、落(お)ち着(つ)け」
春原(すのはら)「平穏(へいおん)な日々(ひび)をこの手(て)にぃーーっ!」
朋也(ともや)「おまえ、そんな大声(おおごえ)で叫(さけ)んでると、また、ラグビー部(ぶ)の連中(れんちゅう)が…」
声(こえ)「おらぁ、朝(あさ)っぱらからうるせぇのはこの部屋(へや)かぁーーっ!」
どんっっ!
ドアを蹴(け)り開(あ)けて、いかつい男(おとこ)が現(あらわ)れた。
男(おとこ)「どっちだ」
朋也(ともや)「こっち」
俺(おれ)は素早(すばや)く春原(すのはら)を指(さ)さす。
男(おとこ)「ちと付(つ)き合(あ)えや」
春原(すのはら)「ひ、ひいぃっ…」
春原(すのはら)「う…」
うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ…
部屋(へや)から引(ひ)きずり出(だ)されていった。
ちゅんちゅん…
小鳥(ことり)のさえずりを聞(き)きながら、ずず、とコーヒーをすする。
ずっと忘(わす)れていたような、静(しず)かな朝(あさ)だった。
春原(すのはら)「イツツ…で、岡崎(おかざき)…今日(きょう)はどうしたって?」
腫(は)れ上(あ)がった頬(ほお)を冷(ひ)えたジュースの缶(かん)で冷(ひ)やしながら、春原(すのはら)は訊(き)いた。
もう言(い)い争(あらそ)う気力(きりょく)も失(う)せているようだ。
朋也(ともや)「別(べつ)に」
春原(すのはら)「学校(がっこう)があったって、こんなに早(はや)く起(お)きないだろ?」
朋也(ともや)「おまえこそ」
春原(すのはら)「いや、僕(ぼく)は早起(はやお)きしたんじゃない。寝(ね)てないだけだ」
春原(すのはら)「ふわ…」
春原(すのはら)「つーか、限界(げんかい)…」
朋也(ともや)「寝(ね)るなら、おまえの分(ぶん)の昼飯(ひるめし)食(く)っていい?」
春原(すのはら)「うーん…」
春原(すのはら)「………」
春原(すのはら)はすでに目(め)を閉(と)じている。
朋也(ともや)「おい、頷(うなず)いてから寝(ね)ろ」
春原(すのはら)「………」
返事(へんじ)はない。
………。
男(おとこ)ふたりがいて静(しず)かだというのも、居心地(いごこち)が悪(わる)いものだった。
朋也(ともや)「………」
でも、ここが俺(おれ)がずっと居(い)た場所(ばしょ)だった。
…あいつに出会(であ)うまで。
家族(かぞく)なんて言葉(ことば)には、嫌(いや)なイメージしかなかった。
それが、今日(きょう)はなんだ。
連休最後(れんきゅうさいご)の休(やす)み…。
それを家族(かぞく)水入(みずい)らずで過(す)ごしてもらうために、俺(おれ)はひとり朝早(あさはや)くに古河(ふるかわ)の家(いえ)を抜(ぬ)け出(で)てきた。
俺(おれ)が他人(たにん)の家族(かぞく)のために気(き)を使(つか)ったのだ。
自分(じぶん)でも、その行動(こうどう)を不思議(ふしぎ)に思(おも)った。
俺(おれ)は渚(なぎさ)と居(い)たかった。
だったら、一緒(いっしょ)にいればよかったのだ。
いつものように利己的(りこてき)に振(ふ)る舞(ま)っていればよかったのだ。
でも、俺(おれ)は薄々(うすうす)と気(ぎ)づき始(はじ)めていた。
俺(おれ)は、渚(なぎさ)だけじゃなく…古河(ふるかわ)の家(いえ)を好(す)きになり始(はじ)めていた。
あんな家族(かぞく)があるなんて、知(し)らなかった。
人間(にんげん)とはみんな利己的(りこてき)で、家族(かぞく)は暗黙(あんもく)の了解(りょうかい)で、そのことに目(め)を瞑(つぶ)りながら、暮(く)らしている。
そう思(おも)っていた。
なのに…
あの家(いえ)に居(い)ると、とても落(お)ち着(つ)いてしまう。
もうどこにも行(い)きたくなくなってしまう。
ああ、滑稽(こっけい)だ。
こんな俺(おれ)が。
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)、何(なに)笑(わら)ってんの」
春原(すのはら)の声(こえ)。
朋也(ともや)「あん?」
春原(すのはら)「なんか、楽(たの)しいことでもあるの?」
春原(すのはら)「教(おし)えろよ、退屈(たいくつ)じゃん」
朋也(ともや)「別(べつ)に、なんもねぇよ」
春原(すのはら)「ちっ…渚(なぎさ)ちゃんに振(ふ)られでもして、泣(な)きにきたのかと思(おも)ってたのにな…」
朋也(ともや)「そんなことあるかよ…」
朋也(ともや)「ただ、逃(に)げてきただけだよ」
朋也(ともや)「家族愛(かぞくあい)に当(あ)てられそうになってな」
春原(すのはら)「家族愛(かぞくあい)?」
朋也(ともや)「ピクニックだってよ。家族(かぞく)でもないのに俺(おれ)もメンバーに入(い)れられてた」
春原(すのはら)「そりゃ渚(なぎさ)ちゃんの彼氏(かれし)だからだろ?」
朋也(ともや)「いや、まだ両親(りょうしん)にはばれてないと思(おも)うけど」
春原(すのはら)「ま、仲(なか)が良(よ)ければ同(おな)じことだろ」
春原(すのはら)「でも、んなことしたら、渚(なぎさ)ちゃん、ショック受(う)けるんじゃないの?」
朋也(ともや)「ちゃんと書(か)き置(お)きしてきたよ。用事(ようじ)できたから、みんなで行(い)ってくれってさ」
春原(すのはら)「だとしても、だよ」
春原(すのはら)「自分(じぶん)のこと避(さ)けてるんじゃないかって、渚(なぎさ)ちゃん、思(おも)うんじゃない?」
朋也(ともや)「そんなの今更(いまさら)だろ」
朋也(ともや)「俺(おれ)のことはあいつだって、よくわかってるよ」
春原(すのはら)「そうかねぇ…それ、おまえの自惚(うぬぼ)れなんじゃない?」
朋也(ともや)「俺(おれ)は、おまえのひがみに聞(き)こえるぞ」
春原(すのはら)「いや、違(ちが)うね。渚(なぎさ)ちゃんは、いつだって不安(ふあん)に思(おも)ってるんだよ」
春原(すのはら)「自信(じしん)がないんだよ」
春原(すのはら)「僕(ぼく)にはそう見(み)えるけどねぇ」
朋也(ともや)「違(ちが)う。俺(おれ)のおかげで、いろんなことに自信(じしん)が持(も)ててきたって、そう言(い)ってくれてるんだぞ」
春原(すのはら)「だからだろ?」
朋也(ともや)「何(なに)が言(い)いたいんだよ…」
春原(すのはら)「いろんなことに自信(じしん)がついてきたのは、おまえのおかげ」
春原(すのはら)「おまえがいてくれるからなんだろ?」
春原(すのはら)「じゃあ、そいつがいなくなったら、どうなるんだよ」
春原(すのはら)「いくら、いろんなことに自信(じしん)がつこうがさ…」
春原(すのはら)「おまえがいつまで自分(じぶん)のことを好(す)きでいてくれるか…」
春原(すのはら)「そのことだけには永遠(えいえん)に自信(じしん)が持(も)てないってことだよ」
春原(すのはら)「僕(ぼく)にはこれ以上(いじょう)わかりやすい説明(せつめい)は無理(むり)だね」
春原(すのはら)「けど、今(いま)の言(い)いたいことがおまえにわからなかったら、おまえら長(なが)くねぇよ」
朋也(ともや)「………」
春原(すのはら)「ふわ…マジ、限界(げんかい)…」
春原(すのはら)「寝(ね)ていい?」
朋也(ともや)「ああ」
春原(すのはら)はコタツに足(あし)を突(つ)っ込(こ)んだまま、仰向(あおむ)けに倒(たお)れる。
すぐ寝息(ねいき)が聞(き)こえてきた。
俺(おれ)は寮(りょう)を飛(と)び出(だ)していた。
──それでも、朋也(ともや)くんと一緒(いっしょ)に居(い)られたら…
──もっと、がんばれる気(き)がしてます。
あれは…
いなくなってしまったら、頑張(がんば)れないと…
俺(おれ)にすがるようにして伝(つた)えた言葉(ことば)だったのだろうか。
渚(なぎさ)らしい…控(ひか)えめな言(い)い方(かた)で。
公園(こうえん)に、ひとりの女(おんな)の子(こ)の姿(すがた)があった。
胸(むね)に手(て)を当(あ)てたまま、不安(ふあん)げな表情(ひょうじょう)できょろきょろと首(くび)を動(うご)かしていた。
俺(おれ)は寄(よ)っていった。
渚(なぎさ)「あ…」
驚(おどろ)いた後(あと)、安堵(あんど)の表情(ひょうじょう)に変(か)わった。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、探(さが)してました」
渚(なぎさ)「ピクニックです。今日(きょう)」
渚(なぎさ)「忘(わす)れてましたか」
俺(おれ)は息(いき)を整(ととの)える。
そして、平静(へいせい)を装(よそお)って言(い)った。
朋也(ともや)「急用(きゅうよう)を思(おも)い出(だ)したから、家(いえ)に帰(かえ)るってさ…書(か)き置(お)き、置(お)いてあっただろ」
渚(なぎさ)「いえ…わたし、知(し)らないです」
渚(なぎさ)「お父(とう)さんが、朋也(ともや)くんを探(さが)してこいって」
ため息(いき)をついて、俺(おれ)は頭(あたま)を垂(た)れた。
朋也(ともや)「ったく…あのオッサンは…」
地面(じめん)に向(む)けてそう呟(つぶや)く。
朋也(ともや)「………」
朋也(ともや)「あのさ…渚(なぎさ)…」
徐々(じょじょ)に顔(かお)を上(あ)げていく。
朋也(ともや)「おまえさ…」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「今(いま)も不安(ふあん)なのか…」
渚(なぎさ)「なにがですか?」
朋也(ともや)「俺(おれ)がおまえのこと、いつか嫌(きら)いになるんじゃないかって…」
渚(なぎさ)「え…」
渚(なぎさ)「いえ…そんなことないです」
言(い)いよどんだ。
渚(なぎさ)「わたし…嫌(きら)われないようにがんばります」
朋也(ともや)「頑張(がんば)る…?」
朋也(ともや)「頑張(がんば)らなくていいんだよ、そんなこと…」
渚(なぎさ)「どうしてですか」
朋也(ともや)「だって嫌(きら)いになんてならねぇよ」
朋也(ともや)「頑張(がんば)らなくても、今(いま)のおまえのままで…」
渚(なぎさ)「でも、心配(しんぱい)です」
朋也(ともや)「おまえさ…」
朋也(ともや)「俺(おれ)が、おまえのこと、どれぐらい好(す)きか知(し)らないだろ」
渚(なぎさ)「………」
朋也(ともや)「おまえもさ…俺(おれ)のこと好(す)きなんだろ?」
渚(なぎさ)「はい、もちろん好(す)きです」
朋也(ともや)「でも、きっとさ…」
朋也(ともや)「それ以上(いじょう)に、俺(おれ)はおまえのこと好(す)きだ」
渚(なぎさ)「それは…本当(ほんとう)ですか」
朋也(ともや)「ああ」
渚(なぎさ)「もし、それが本当(ほんとう)なら…朋也(ともや)くんは、ものすごいことになってます」
渚(なぎさ)「どきどきして、うれしくて、恥(は)ずかしくて…」
渚(なぎさ)「でも、不安(ふあん)で、心配(しんぱい)で…」
渚(なぎさ)「苦(くる)しくて…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、大変(たいへん)です…」
全部(ぜんぶ)、自分(じぶん)のことだった。
渚(なぎさ)の思(おも)いだ。
自分(じぶん)はこんなにも思(おも)われている。
それは…なんて、幸(しあわ)せなことなんだろう。
世(よ)の中(なか)にひとりでも、俺(おれ)のことが好(す)きで、思(おも)い悩(なや)んでくれる人(ひと)がいる。
離(はな)れていても。ひとりの夜(よる)も。遠(とお)くで思(おも)ってくれている。
自分(じぶん)という存在(そんざい)が、他人(たにん)の中(なか)にある。
それはなんて、頼(たの)もしい支(ささ)えだろう。
それだけで、強(つよ)くいられる。
そして、俺(おれ)も、そいつのことが好(す)きだった。
渚(なぎさ)「でも、そんなわけないです」
朋也(ともや)「信(しん)じろ」
渚(なぎさ)「信(しん)じられないです」
だったら、証明(しょうめい)するしかなかった。
朋也(ともや)「…じゃあ、勝負(しょうぶ)しようか」
渚(なぎさ)「どうやってですか」
朋也(ともや)「手(て)を繋(つな)ぐ」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「強(つよ)く握(にぎ)り合(あ)う」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「離(はな)そうとしたほうが負(ま)け」
朋也(ともや)「いいか?」
渚(なぎさ)「はいっ」
大(おお)きく返事(へんじ)して、手(て)を差(さ)し出(だ)す。
俺(おれ)はそれを握(にぎ)った。
休(やす)みの日(ひ)の、公園(こうえん)。
子供連(こどもづ)れの家族(かぞく)、散歩(さんぽ)する年寄(としよ)り…。
徐々(じょじょ)に人(ひと)が増(ふ)えてくる。
その中(なか)、俺(おれ)たちは、手(て)を握(にぎ)り合(あ)ったままでベンチに座(すわ)っていた。
相当(そうとう)、恥(は)ずかしい…。
でも、こうして、ずっと握(にぎ)ってあげていれば…
渚(なぎさ)は自信(じしん)がつくはずだった。
悩(なや)むことも少(すく)なくなるはずだった。
でも…勝負(しょうぶ)なんて、本当(ほんとう)はもうどうでもよかった。
わざわざ気(き)を使(つか)って、渚(なぎさ)の家(いえ)を出(で)た休日(きゅうじつ)。
最初(さいしょ)からこうして一緒(いっしょ)にいればよかったんだ。
やりたいようにする。
そうしていれば良(よ)かったんだ。
渚(なぎさ)「あ」
突然(とつぜん)、渚(なぎさ)が声(こえ)をあげた。
渚(なぎさ)「お父(とう)さんです」
朋也(ともや)「げ…マジ?」
前方(ぜんぽう)から、オッサンが肩(かた)をいからせて大股(おおまた)でやってくる。
渚(なぎさ)「強敵(きょうてき)です」
渚(なぎさ)が、さらに強(つよ)く俺(おれ)の手(て)を握(にぎ)る。
秋生(あきお)「なんだよ、てめぇらっ」
秋生(あきお)「いたんなら、呼(よ)びにこいっ。ちっ…もうこんな時間(じかん)じゃねぇか…」
渚(なぎさ)「ごめんなさいです。でも、いろいろとわけがあるんです」
秋生(あきお)「遠出(とおで)はもう無理(むり)か…」
秋生(あきお)「………」
思(おも)いっきり睨(にら)まれる。
朋也(ともや)「い、いや…悪(わる)いとは思(おも)ってる…」
オッサンは俺(おれ)と渚(なぎさ)の腕(うで)をそれぞれ掴(つか)むと…
秋生(あきお)「ふんっ!」
力(ちから)ずくで引(ひ)き離(はな)した。
渚(なぎさ)「あ…」
朋也(ともや)「なにすんだよっ」
すぽっ。代(か)わりに俺(おれ)の手(て)に堅(かた)いものが握(にぎ)らされる。
バットのグリップだった。
秋生(あきお)「てめぇのせいで、ピクニック行(い)けなかったからな」
秋生(あきお)「野球(やきゅう)の相手(あいて)しろ」
朋也(ともや)「野球(やきゅう)?」
秋生(あきお)「よぅし、ガキ共(とも)を集(あつ)めてくるな」
来(き)た時(とき)と同(おな)じように大股(おおまた)で歩(ある)いていった。
渚(なぎさ)「お父(とう)さんの趣味(しゅみ)です」
朋也(ともや)「ああ…前(まえ)に聞(き)いたよ」
渚(なぎさ)「それで、その…勝負(しょうぶ)のほうは…」
朋也(ともや)「引(ひ)き分(わ)けだ」
渚(なぎさ)「じゃ、同(おな)じぐらいってことですか」
朋也(ともや)「そうだな…」
渚(なぎさ)「なんだか、良(よ)かったです」
朋也(ともや)「ああ」
渚(なぎさ)「うれしい気持(きも)ちも、苦(くる)しい気持(きも)ちも同(おな)じです」
本当(ほんとう)に、嬉(うれ)しそうに言(い)った。
だから俺(おれ)も、同(おな)じ気持(きも)ちになった。
渚(なぎさ)「…えへへ」
ふたりは今日(きょう)からも、相手(あいて)に負(ま)けないよう努力(どりょく)をし続(つづ)けていくのだろう。
相手(あいて)に好(す)きでいてもらえるように。
それはとてもいい関係(かんけい)のように思(おも)えた。
声(こえ)「おふたりさん、どうぞ」
下(した)のほうから声(こえ)がした。
朋也(ともや)「ぐあ…早苗(さなえ)さん…」
見(み)ると、早苗(さなえ)さんがレジャーシートを引(ひ)いて、その上(うえ)に座(すわ)っていた。
しかも、重箱(じゅうばこ)のような弁当(べんとう)まで用意(ようい)されている…。
朋也(ともや)「ここで、ピクニックすか…」
早苗(さなえ)「はいっ」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、これ、わたしも手伝(てつだ)いました。ぜひ食(た)べてください」
渚(なぎさ)「卵焼(たまごやき)きは甘(あま)くてよかったですかっ」
朋也(ともや)「あ、ああ…」
腕(うで)を引(ひ)っ張(ぱ)られて、座(すわ)らされる。
早苗(さなえ)「くつろいでくださいね」
朋也(ともや)「すんげぇ目立(めだ)ってて、落(お)ち着(つ)けないんすけど」
早苗(さなえ)「気(き)になるのは最初(さいしょ)だけです」
朋也(ともや)「そうすか…」
目(め)の前(まえ)に置(お)いたコップにお茶(ちゃ)を注(つ)いでくれる。
遠(とお)くでは、オッサンが、子供(こども)たちとジャンケンを始(はじ)めている。
人手(ひとで)は足(た)りているらしく、一向(いっこう)にお呼(よ)びがかからない。
そもそも野球(やきゅう)は苦手(にがて)だ。
朋也(ともや)(ああ…なんつーか…)
朋也(ともや)(懐(なつ)かしい感(かん)じ…)
こんな低(ひく)い目線(めせん)を忘(わす)れていた。
地面(じめん)に群生(ぐんせい)した雑草(ざっそう)が、敷(し)き詰(つ)められた芝生(しばふ)のように広(ひろ)く見(み)える。
それを踏(ふ)みしめる子供(こども)たちも、大(おお)きく見(み)えた。
手(て)を後(うし)ろについて見上(みあ)げると、空高(そらたか)くに飛行機(ひこうき)の影(かげ)。
朋也(ともや)(ああ、なんか、すごく気持(きも)ちいい)
目(め)を細(ほそ)めてずっと見(み)ていた。
そうしながら俺(おれ)は、いつからか渚(なぎさ)の手(て)を握(にぎ)っていた。
渚(なぎさ)「勝負(しょうぶ)の続(つづ)きですか?」
朋也(ともや)「勝負(しょうぶ)もなにも関係(かんけい)ねぇよ…」
そうしたかっただけだ。
渚(なぎさ)「はい…」
渚(なぎさ)が身(み)を寄(よ)せてくる。
オッサンが、バッターボックスに入(はい)っていた。
それを早苗(さなえ)さんが、大声(おおごえ)で、応援(おうえん)している。
その後(うし)ろで、俺(おれ)たちは隠(かく)れるように…
初(はじ)めてのキスをした。
深夜(しんや)0時(じ)を回(まわ)り、布団(ふとん)を敷(し)いたところで…
秋生(あきお)「よぅ、まだ起(お)きてるか」
半分開(はんぶんひら)いた戸(と)から、オッサンが顔(かお)を覗(のぞ)かせた。
朋也(ともや)「ああ、これから寝(ね)ようとしてたところだけど」
秋生(あきお)「なら、手伝(てつだ)ってやるから、こい」
朋也(ともや)「あん?」
秋生(あきお)「探(さが)し物(もの)があんだろ」
朋也(ともや)「あ、ああ」
秋生(あきお)「静(しず)かに歩(ある)けよ。渚(なぎさ)に起(お)きられたら、まずいからな…」
朋也(ともや)「ああ…」
秋生(あきお)「見(み)つからなくても、文句(もんく)言(い)うなよ」
朋也(ともや)「言(い)わない。もとから望(のぞ)み薄(うす)だからな」
秋生(あきお)「ちっ…しかし、そんなものを探(さが)そうなんて、わけわからんぞ」
朋也(ともや)「何(なに)を」
秋生(あきお)「渚(なぎさ)が小(ちい)さい時(とき)に使(つか)ってたオマルだろ」
朋也(ともや)「いや、そんなもの探(さが)してないけど」
秋生(あきお)「おまえ、必死(ひっし)で探(さが)してただろうがっ、オマルを!」
朋也(ともや)「探(さが)してねぇよ!
オマルであって、オマルじゃなかったはずだろっ!」
秋生(あきお)「わけわからんこと言(い)ってんじゃねぇ、オマルはオマルだろうがっ!」
朋也(ともや)「そりゃ、作戦名(コードネーム)、コードネームだろうがっ!」
秋生(あきお)「はぁん?
コードネームだとぅ!?
俺(おれ)を馬鹿(ばか)にしてんのか、小僧(こぞう)っ!」
朋也(ともや)「あんたが付(つ)けたんだよ、オッサン!!」
秋生(あきお)「てめぇ、いい加減(かげん)ブチ切(き)れるぞ、うらあぁぁぁーーっ!」
声(こえ)「もう深夜(しんや)ですから、お静(しず)かにお願(ねが)いしますねーっ」
早苗(さなえ)さんの声(こえ)。
秋生(あきお)「静(しず)かにしろ、馬鹿(ばか)!
渚(なぎさ)が起(お)きるだろっ」
朋也(ともや)「あんたが言(い)うな…」
今(いま)ので起(お)きていなかったら、奇跡(きせき)だ。
今更(いまさら)意味(いみ)のないすり足(あし)で、オッサンは廊下(ろうか)を歩(ある)いていく。
俺(おれ)もその後(あと)に続(つづ)いた。
秋生(あきお)「ふぅ、到着(とうちゃく)」
秋生(あきお)「これより、作戦名(コードネーム):オマルを遂行(すいこう)する!」
自分(じぶん)で付(つ)けたのを思(おも)い出(だ)したようである。
朋也(ともや)「ちなみに、探(さが)すのはオマルじゃねぇぞ」
秋生(あきお)「なんだ」
朋也(ともや)「前(まえ)に話(はな)しただろ。渚(なぎさ)が小(ちい)さい時(とき)に聞(き)かされて、わずかに憶(おも)えてる話(はなし)があるって」
朋也(ともや)「もしかしたら、本(もと)として残(のこ)ってるかもしれないから、それを探(さが)したいんだ」
秋生(あきお)「本(ほん)か…本(ほん)は結構(けっこう)あるぞ。厄介(やっかい)だな」
秋生(あきお)「一万冊(いちまんさつ)はないが、千冊近(せんさつちか)くはあると思(おも)うぞ」
朋也(ともや)「何(なに)が」
秋生(あきお)「エロ本(ほん)」
朋也(ともや)「………」
秋生(あきお)「早苗(さなえ)には内緒(ないしょ)だぞ、てめぇ」
ふたりで明(あ)け方(がた)近(ちか)くまで探(さが)し続(つづ)けたが、結局(けっきょく)絵本(えほん)の一冊(いっさつ)すら見(み)つけだすことができなかった。
秋生(あきお)「あれだな、おい。邪魔(じゃま)だから、捨(す)てちまったんだ、きっと」
邪魔(じゃま)だから捨(す)てるべきものは、別(べつ)にもっとあると思(おも)うが。
まぁ、実際(じっさい)、絵本(えほん)なんかを大事(だいじ)に取(と)っておく家庭(かてい)は少(すく)ないのかもしれない。
秋生(あきお)「気(き)が済(す)んだか」
朋也(ともや)「………」
秋生(あきお)「エロ本(ほん)やるから、元気(げんき)だせ」
朋也(ともや)「いらねぇよ…」
秋生(あきお)「ちっ…可愛(かわい)げのない野郎(やろう)だぜ」
秋生(あきお)「とにかく今日(きょう)はもう寝(ね)ようぜ。おまえ、明日(あした)から学校(がっこう)だろ。寝坊(ねぼう)すっぞ」
朋也(ともや)「ああ、そうだな…」
仕方(しかた)なく、引(ひ)き上(あ)げることにした。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:25:11
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我注音的时候发现两个意思都差不多,特别是表示种类和同类的时候,不太清楚怎么区分,就用了一个常用的读音。
この類(たぐい)には関心がない。
この類(るい)の本。
这里确实是類(たぐい),因为5月6日秋生有句话:
秋生(あきお)「もし、あいつが昔(むかし)にそういった類(たぐい)の劇(げき)を見(み)ているとしてもだ」
ps:已更新。谢谢hkuczc的长期关注。
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幻想世界
IX
ずっと、続(つづ)いていた穏(おだ)やかな暮(く)らし。
それは、彼女(かのじょ)とふたりで居(い)れば、ずっと続(つづ)くと思(おも)っていた。
世界(せかい)にはふたりしかいなくても、ずっと続(つづ)いていくと思(おも)っていた。
でも、何(なに)かが変(か)わり始(はじ)めていた。
冬(ふゆ)の到来(とうらい)と共(とも)に。
まるで冬(ふゆ)が…彼女(かのじょ)の体力(たいりょく)を奪(うば)っていくようだった。
気温(きおん)が下(さ)がると共(とも)に、彼女(かのじょ)は眠(ねむ)ることが多(おお)くなった。
ずっと、元気(げんき)にふたりで遊(あそ)んでいたのに。
遠(とお)くには、とても不吉(ふきつ)な雲(くも)が広(ひろ)がっていた。
…雪雲(ゆきぐも)だ。
僕(ぼく)は、決心(けっしん)する時(とき)だと思(おも)った。
今(いま)、そうしなければ、すべてが手遅(ておく)れになってしまう。
今(いま)なら、まだ間(ま)に合(あ)う気(き)がした。
冬(ふゆ)がやってきてしまえば、何(なに)もかもが雪(ゆき)に埋(う)もれてしまう。
そうなる前(まえ)に。
小屋(こや)に戻(もど)ると、彼女(かのじょ)は壁(かべ)にもたれて座(すわ)って、ぼーっと窓(まど)の外(そと)を見(み)ていた。
僕(ぼく)はそれが気(き)がかりだった。
寒(さむ)さのせいだろうか。
僕(ぼく)は近(ちか)づいていって、窓(まど)の外(そと)を指(さ)さした。
彼女(かのじょ)の見(み)ている先(さき)よりも、もっと遠(とお)く。空(そら)の果(は)てを。
…ん?
彼女(かのじょ)が気(き)づいて、僕(ぼく)を見(み)る。
…あそこがどうしたの?
僕(ぼく)は指(さ)さし続(つづ)けた。
…いきたいの?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…でも、冬(ふゆ)がくるよ。
僕(ぼく)はじっと彼女(かのじょ)の顔(かお)を見(み)続(つづ)けた。
…それでも?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…これ以上(いじょう)、寒(さむ)くなったら、わたしは動(うご)けなくなるよ…
だったら、なおさら。
…それにね、この家(いえ)を離(はな)れたら、帰(かえ)ってこれなくなるよ…
………。
…それでも?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…あの先(さき)には何(なに)があるの?
僕(ぼく)はぴょんぴょんと飛(と)び跳(は)ねる。
…楽(たの)しいところ?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…いろんなものがあって…
…毎日(まいにち)が楽(たの)しくて…
…温(あたた)かな場所(ばしょ)…?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…でも、もう間(ま)に合(あ)わないよ…
…冬(ふゆ)の雲(くも)に追(お)いつかれるよ…
僕(ぼく)は記憶(きおく)を辿(たど)る。
深(ふか)い淀(よど)みの中(なか)の記憶(きおく)を。
空(そら)だ。
空(そら)をいくんだ。
僕(ぼく)は手(て)を空(そら)に向(む)けて、滑(なめ)らせた。
…空(そら)を…いくの?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…どうやって?
手(て)と手(て)を合(あ)わせる。
…作(つく)るの?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
…空(そら)を飛(と)んでいける…のりものを?
こくん。僕(ぼく)は大(おお)きく頷(うなず)く。
今(いま)、確(たし)かに僕(ぼく)の心(こころ)の中(なか)にある形(かたち)。
それが彼女(かのじょ)に伝(つた)わっているだろうか。
………。
彼女(かのじょ)はまた、少(すこ)しぼーっとした後(あと)…
こくん。小(ちい)さく頷(うなず)いた。
その日(ひ)から、僕(ぼく)らは、空(そら)を飛(と)ぶ乗(の)り物(もの)を作(つく)り始(はじ)めた。
僕(ぼく)がガラクタを集(あつ)めて、彼女(かのじょ)が組(く)み上(あ)げていく。
空(そら)はどんどん、曇(くも)っていく。
僕(ぼく)は組(く)み上(あ)げられていく山(やま)を見上(みあ)げる。
そこに生(は)える大(おお)きな翼(つばさ)を、僕(ぼく)は思(おも)い描(えが)いた。
冬(ふゆ)が来(く)る前(まえ)にどうか…。
その翼(つばさ)で、飛(と)べますように。
白(しろ)い息(いき)を吐(つ)く彼女(かのじょ)。
目(め)をこする。
…少(すこ)し、眠(ねむ)い。
僕(ぼく)は心配(しんぱい)げに彼女(かのじょ)を見上(みあ)げた。
…ごめんね、続(つづ)けよう。
彼女(かのじょ)は頑張(がんば)り続(つづ)けた。
彼女(かのじょ)もわかっていたのかもしれない。
今(いま)、やらないとダメだということを。
彼女(かのじょ)も自分(じぶん)で言(い)っていた。
冬(ふゆ)が来(く)れば、動(うご)けなくなってしまうと。
それがどういうことを指(さ)すのか、よくわからなかった。
でも、きっと、どうしようもなくなってしまうんだ。
だから、休(やす)みなく、作業(さぎょう)を続(つづ)けた。
僕(ぼく)も、ガラクタを彼女(かのじょ)の元(もと)に運(はこ)び続(つづ)けた。
そして、次(つぎ)、彼女(かのじょ)を見(み)た時(とき)。
冷(つめ)たい地面(じめん)に、その体(からだ)を横(よこ)たえていた。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:26:02
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5月6日
(
火
)
渚(なぎさ)「それでは、いってきます」
朋也(ともや)「いってきます」
早苗(さなえ)「はい、仲良(なかよ)くいってらっしゃい」
秋生(あきお)「気(き)ぃ付(つ)けていけよ」
ふたりに見送(みおく)られ、家(いえ)を出(で)る。
なんだか、小学生(しょうがくせい)の兄妹(あにいもうと)のような見送(みおく)られ方(かた)だった。
いや、兄妹(あにいもうと)じゃなくて…姉弟(してい)なのか…。
違和感(いわかん)バリバリだが。
渚(なぎさ)「ああ、もう一週間(いっしゅうかん)もないです。次(つぎ)の日曜(にちよう)には、発表会(はっぴょうかい)です」
朋也(ともや)「あんまり焦(あせ)るな。台本(だいほん)もできたじゃないか」
渚(なぎさ)「はい。でも、ちゃんとセリフを覚(おぼ)えなくてはダメです」
朋也(ともや)「でも、覚(おぼ)えるだけじゃ駄目(だめ)だぞ」
渚(なぎさ)「はい、わかってます。演(えん)じなくてはなりません」
渚(なぎさ)「演(えん)じること、それは、役(やく)になりきることです」
渚(なぎさ)「とても大変(たいへん)なことですが、その人物(じんぶつ)になりきって演(えん)じてみたいと思(おも)います」
見(み)ろ。そこらへんにいる素人(しろうと)を連(つ)れてきたほうがマシだと思(おも)えたあの渚(なぎさ)が、こんなにも演劇部員(えんげきぶいん)らしくなっている。
今(いま)はもう、やる気(き)のある素人(しろうと)並(な)みだ。胸(むね)を張(は)ってそう言(い)える。
昼休(ひるやす)みは、部室(ぶしつ)で演劇部(えんげきぶ)のミーティング。
朋也(ともや)「それで…俺(おれ)たちは何(なに)をすればいい」
朋也(ともや)「そろそろ役割分担(やくわりぶんたん)してもらわなくちゃ、準備(じゅんび)もできないぞ」
渚(なぎさ)「はい、そうですね」
渚(なぎさ)「でも…後(あと)、何(なに)が必要(ひつよう)なのでしょうか」
朋也(ともや)「おまえな…」
朋也(ともや)「音楽(おんがく)とか、効果音(こうかおん)とか、照明(しょうめい)とか、たっくさんあるだろう?」
朋也(ともや)「それぐらい俺(おれ)でもわかるぞ」
渚(なぎさ)「すみません。わたし、本当(ほんとう)全然知(ぜんぜんし)らなくて…」
春原(すのはら)「音楽(おんがく)って?
僕(ぼく)、ピアノなんて弾(ひ)けないけど」
朋也(ともや)「いや、生(なま)でなくていいだろ」
春原(すのはら)「効果音(こうかおん)は?
爆竹(ばくちく)とかでいいの?」
朋也(ともや)「そんなアクションシーンはないだろ」
春原(すのはら)「照明(しょうめい)って?
体育館(たいいくかん)の照明(しょうめい)のスイッチをパチパチ切(き)り替(か)えるだけでいいの?」
朋也(ともや)「簡単(かんたん)な照明(しょうめい)だな、おい」
春原(すのはら)「おまえねっ、さっきから文句(もんく)ばっかり言(い)いやがって、どうしろって言(い)うんだよ!」
朋也(ともや)「知(し)るか、俺(おれ)だって素人(しろうと)だ」
春原(すのはら)「僕(ぼく)だって、素人(しろうと)だっ」
渚(なぎさ)「あの、わたしも素人(しろうと)です」
こんな奴(やつ)らが演劇部(えんげきぶ)。
渚(なぎさ)「どうしましょう…」
朋也(ともや)「ちっ…いくぞ」
渚(なぎさ)「どこへですか?」
朋也(ともや)「職員室(しょくいんしつ)だ。こんな時(とき)のための顧問(こもん)だろ」
渚(なぎさ)「あ、そうですっ」
渚(なぎさ)「幸村先生(こうむらせんせい)がいました」
幸村(こうむら)「うむ…」
幸村(こうむら)「そうだの…いろいろといる」
春原(すのはら)「相変(あいか)わらず、とろいしゃべり方(かた)だな、この人(ひと)は」
渚(なぎさ)「ゆっくり聞(き)きましょう、春原(すのはら)さん」
幸村(こうむら)「大切(たいせつ)なのはみっつ…」
幸村(こうむら)「美術(びじゅつ)、音響(おんきょう)と、照明(しょうめい)…だの」
幸村(こうむら)「美術(びじゅつ)は、衣装(いしょう)や、舞台道具(ぶたいどうぐ)を用意(ようい)する」
幸村(こうむら)「音響(おんきょう)は…あらかじめテープに編集(へんしゅう)しておいた背景音楽(はいけいおんがく)や効果音(こうかおん)を流(なが)す」
幸村(こうむら)「照明(しょうめい)は…数種類(すうしゅるい)のライトを使(つか)い分(わ)け、舞台(ぶたい)を効果的(こうかてき)に照(て)らし出(だ)す」
幸村(こうむら)「もし、三人(さんにん)しかいないというのであれば…」
幸村(こうむら)「美術(びじゅつ)は先(さき)に用意(ようい)し…」
幸村(こうむら)「残(のこ)りを役者(やくしゃ)と音響(おんきょう)と照明(しょうめい)に振(ふ)り分(わ)けるのがよかろう…」
渚(なぎさ)「わかりました。では、そうします」
渚(なぎさ)「ありがとうございました」
幸村(こうむら)「そうそう…」
幸村(こうむら)「…今週(こんしゅう)は演劇部(えんげきぶ)、合唱部(がっしょうぶ)…どちらの番(ばん)だったかの」
渚(なぎさ)「今週(こんしゅう)は演劇部(えんげきぶ)です」
渚(なぎさ)「そして今日(きょう)は演劇部(えんげきぶ)の活動(かつどう)、初日(しょにち)です」
嬉(うれ)しそうに胸(むね)を張(は)って言(い)った。
幸村(こうむら)「うむ…では、放課後(ほうかご)」
渚(なぎさ)「はい。よろしくお願(ねが)いします」
朋也(ともや)「やっぱり、音響(おんきょう)と照明(しょうめい)なんだな、必要(ひつよう)なのは」
春原(すのはら)「どっちが、どっちをする」
朋也(ともや)「おまえ、照明(しょうめい)っぽいよな」
春原(すのはら)「どういう意味(いみ)だよっ」
朋也(ともや)「こう、オンオフ、オンオフを繰(く)り返(かえ)すだけって単純(たんじゅん)さが合(あ)ってると思(おも)って」
春原(すのはら)「じゃ、おまえも照明(しょうめい)じゃないかよっ」
朋也(ともや)「俺(おれ)は繊細(せんさい)だからな。音響向(おんきょうむ)きだ」
朋也(ともや)「それでいいよな、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「はい、構(かま)いません。それでお願(ねが)いします」
放課後(ほうかご)もまた、部室(ぶしつ)に集(あつ)まっていた。
そこには、顧問(こもん)である幸村(こうむら)の姿(すがた)もあった。
春原(すのはら)「こんなに種類(しゅるい)、あるのかよ…」
目(め)の前(まえ)には、蓋(ふた)を開(あ)けたダンボールの数々(かずかず)。中(なか)には、照明器具(しょうめいきぐ)が詰(つ)まっていた。
春原(すのはら)「こりゃオンオフだけの単純(たんじゅん)な問題(もんだい)じゃないぞ…」
幸村(こうむら)「どれだけ大変(たいへん)かは劇(げき)による…」
幸村(こうむら)「そんな展開(てんかい)の早(はや)い劇(げき)をやるつもりかな…」
渚(なぎさ)「いえ、ゆっくりと進(すす)むお話(はなし)です。とてもなだらかです」
朋也(ともや)「ああ、なんの起伏(きふく)もない。クライマックスすらない」
幸村(こうむら)「ふむ…なら、簡単(かんたん)だろうて」
春原(すのはら)「なんかつまんねぇな…。ピカピカ光(ひか)らせてさ、ディスコみたくフィーバーしようぜ」
朋也(ともや)「おまえ、すげぇダサいからな」
朋也(ともや)「で、音響(おんきょう)なんだが、ジィさん。どうすりゃいいんだ」
幸村(こうむら)「効果音(こうかおん)は、その鍵盤(けんばん)で鳴(な)らすがよい」
春原(すのはら)「おっ、シンセサイザーじゃんっ。んなのがあんのかよっ」
それをダンボールの中(なか)から引(ひ)っ張(ぱ)り出(だ)してきて、コンセントを繋(つな)いで電源(でんげん)を入(い)れてみる。
春原(すのはら)「鍵盤(けんばん)ごとにテープが貼(は)ってあるじゃん。『戦慄(せんりつ)』…ってなんだ?」
春原(すのはら)「押(お)してみよ」
春原(すのはら)が勝手(かって)に鍵盤(けんばん)を叩(たた)く。すると、効果音(こうかおん)が鳴(な)った。
春原(すのはら)「うお…びっくりした…いい音(おと)出(だ)すじゃんっ」
春原(すのはら)「へへ、おもしろそっ」
朋也(ともや)「おまえ、照明(しょうめい)だからな」
春原(すのはら)「いいじゃん、いいじゃん、ちょっと触(さわ)らせてよっ」
春原(すのはら)「お、おい、岡崎(おかざき)っ」
朋也(ともや)「なんだよ」
春原(すのはら)「おまえの後(うし)ろに…」
春原(すのはら)「藤林杏(ふじばやしきょう)があぁぁぁぁぁーーーーっ!」
朋也(ともや)「絶対(ぜったい)殴(なぐ)られるからな…」
春原(すのはら)「他(ほか)には…そうだな」
春原(すのはら)「み、美佐枝(みさえ)さんが…」
春原(すのはら)「おっぱい丸出(まるだ)しで歩(ある)いてるうぅぅーーーーーっ!?」
朋也(ともや)「それも絶対(ぜったい)蹴(け)られるからな」
春原(すのはら)「後(あと)は…そうだなぁ…」
春原(すのはら)「え?
渚(なぎさ)ちゃん、なに?」
春原(すのはら)「えぇっ!?」
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)より、僕(ぼく)のほうが好(す)きになっちゃったってぇーーっ!?」
朋也(ともや)「ありえないからな…」
春原(すのはら)「そ、そうか…わかったよ…」
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)には内緒(ないしょ)で駆(か)け落(お)ちして…ふたりで暮(く)らそう…」
春原(すのはら)「手(て)を取(と)り合(あ)って、暗(くら)い森(もり)の中(なか)を進(すす)むふたり…」
春原(すのはら)「はぁ…はぁ…」
春原(すのはら)「背後(はいご)から、迫(せま)り来(く)る何(なに)か…」
春原(すのはら)「振(ふ)り返(かえ)ると、そこには…」
春原(すのはら)「怒(いか)り狂(くる)った岡崎(おかざき)がああぁぁーーーっ!」
ゲシッ!
朋也(ともや)「俺(おれ)は化(ば)け物(もの)かっ!」
蹴飛(けと)ばしておく。
朋也(ともや)「ていうか、おまえの劇(げき)、こんな効果音(こうかおん)、使(つか)わないだろ…」
渚(なぎさ)「あ、はい。音楽(おんがく)だけでいいかもしれないです」
朋也(ともや)「じゃ、そうしようぜ」
春原(すのはら)「ええぇぇーーーーーーっ!」
朋也(ともや)「うるさいからな…」
春原(すのはら)「うおおぉぉぉぉーーーーっ!」
ゲシッ!
朋也(ともや)「で、曲(きょく)のほうだが、どうすりゃいい」
幸村(こうむら)「ふむ…」
幸村(こうむら)「音楽(おんがく)はたくさん聴(き)くかの」
朋也(ともや)「いや、悪(わる)いが、ほとんど聴(き)かない」
幸村(こうむら)「ふむ…だとしたら…」
幸村(こうむら)「音楽室(おんがくしつ)にある教材(きょうざい)のレコードから、場面(ばめん)に合(あ)った音楽(おんがく)を探(さが)すのがよかろう…」
春原(すのはら)「それってクラシックや音楽(おんがく)の教科書(きょうかしょ)に載(の)ってる音楽(おんがく)じゃないの?」
春原(すのはら)が口(くち)を挟(はさ)む。
幸村(こうむら)「ふむ…それ以外(いがい)はなかろうな」
春原(すのはら)「だっせーの。もっとこう、ボンバヘッ!てな感(かん)じの音楽(おんがく)がノリノリでいいのにさ」
朋也(ともや)「そのほうが、ダサいからな」
春原(すのはら)「おまえ、ボンバヘッ!を馬鹿(ばか)にすんのかよっ!」
朋也(ともや)「いいから、おまえ、この照明(しょうめい)、体育館(たいいくかん)まで移動(いどう)させておけよ」
春原(すのはら)「あん?
おまえは」
朋也(ともや)「俺(おれ)と渚(なぎさ)は音楽室(おんがくしつ)へいく」
渚(なぎさ)「春原(すのはら)さん、ひとりで大丈夫(だいじょうぶ)でしょうか」
朋也(ともや)「バスケん時(とき)に見(み)たろ。あいつ、体(からだ)だけは丈夫(じょうぶ)なんだ。力仕事(ちからしごと)は任(まか)せておけ」
俺(おれ)たちは階段(かいだん)を上(のぼ)り、廊下(ろうか)の突(つ)き当(あ)たりにある音楽室(おんがくしつ)に入(はい)る。
朋也(ともや)「そもそも、イメージに合(あ)う音楽(おんがく)って、どんなのなんだよ」
朋也(ともや)「俺(おれ)にはそれすらわからないぞ」
渚(なぎさ)「わたしにもわからないです。聴(き)いてみないと」
朋也(ともや)「聴(き)くって、ここにあるレコード全部(ぜんぶ)聴(き)いて探(さが)すのか?」
音楽室(おんがくしつ)の奥(おく)にはさらに小部屋(こべや)があって、そこを覗(のぞ)くと、気(き)が遠(とお)くなるような数(かず)のレコード盤(ばん)を確認(かくにん)することができた。
朋也(ともや)「何日(なんにち)かかるんだよ、一体(いったい)…」
声(こえ)「こんにちは、おふたりさん」
入(い)り口(ぐち)のほうから声(こえ)が聞(き)こえてきた。
振(ふ)り返(かえ)ると、そこに仁科(にしな)と杉坂(すぎさか)が立(た)っていた。
朋也(ともや)「よぅ」
渚(なぎさ)「こんにちは、仁科(にしな)さん、杉坂(すぎさか)さん」
杉坂(すぎさか)「今(いま)、幸村先生(こうむらせんせい)に言(い)われて、駆(か)けつけたんです」
杉坂(すぎさか)「劇(げき)に使(つか)う曲(きょく)をお探(さが)しとか」
渚(なぎさ)「はい。そうなんです」
渚(なぎさ)「けど…レコードが多(おお)すぎて、どうしていいかわからないんです」
杉坂(すぎさか)「それなら、お手伝(てつだ)いできそうです」
杉坂(すぎさか)「りえちゃん、ほとんどのクラシックは知(し)っていますから」
杉坂(すぎさか)「ねぇ、りえちゃん」
仁科(にしな)「はい。任(まか)せておいて下(くだ)さい」
仁科(にしな)「どんな曲調(きょくちょう)のをお探(さが)しですか?」
朋也(ともや)「おまえ、ストーリーを教(おし)えたほうが早(はや)いんじゃないのか」
渚(なぎさ)「そうですね。お話(はな)ししたいです。聞(き)いていただけますか」
仁科(にしな)「はい、もちろんです」
渚(なぎさ)「というわけで、女(おんな)の子(こ)は寂(さび)しくなくなりました」
渚(なぎさ)「おしまいです」
仁科(にしな)「………」
仁科(にしな)「えっと…」
渚(なぎさ)は、本当(ほんとう)にストーリーを聞(き)かせただけだった。
仁科(にしな)「その…どんな世界(せかい)なんでしょう、そこは」
だから、仁科(にしな)は困(こま)った様子(ようす)でそう訊(き)いた。
渚(なぎさ)「世界(せかい)、と言(い)いますと、どんな木(き)が生(は)えて、どんな果物(くだもの)がなる、とかそういうことでしょうか?」
朋也(ともや)「おまえな、地理(ちり)の授業(じゅぎょう)じゃねぇんだから、もっとわかりやすく表現(ひょうげん)する何(なに)かがあるだろ?」
渚(なぎさ)「何(なに)かって…その世界(せかい)には女(おんな)の子(こ)しかいないんです」
朋也(ともや)「いや、そういう意味(いみ)じゃなくて、その世界(せかい)は洋風(ようふう)なのか、和風(わふう)なのか、とかさ」
朋也(ともや)「要(よう)は世界観(せかいかん)だよ」
渚(なぎさ)「小屋(こや)がひとつ、ぽつんとあって、外(そと)はずっと何(なに)もない大地(だいち)が続(つづ)いてます」
仁科(にしな)「うーん…」
仁科(にしな)は考(かんが)え込(こ)む。あまりに特徴(とくちょう)に乏(とぼ)しい世界(せかい)で、曲(きょく)のイメージが湧(わ)かないのだ。
朋也(ともや)「小屋(こや)はどんなだ。中(なか)には何(なに)がある」
渚(なぎさ)「小屋(こや)の中(なか)には、机(つくえ)があります」
朋也(ともや)「そりゃ、あるだろうな。どんなだよ」
渚(なぎさ)「普通(ふつう)の机(つくえ)です。そこでお茶(ちゃ)を飲(の)むと落(お)ち着(つ)きそうです」
その場(ば)にいた渚(なぎさ)以外(いがい)全員(ぜんいん)が、顔(かお)をしかめた。
朋也(ともや)「他(ほか)には」
渚(なぎさ)「他(ほか)には何(なに)もないです」
朋也(ともや)「おまえ、それでどうして、その話(はなし)を幻想物語(げんそうものがたり)なんて呼(よ)べたんだよ。ぜんぜん幻想的(げんそうてき)じゃないじゃないか」
渚(なぎさ)「でも、幻想的(げんそうてき)な世界(せかい)なんです…」
朋也(ともや)「だから、どこが」
渚(なぎさ)「雰囲気(ふんいき)です」
朋也(ともや)「伝(つた)わらねぇよ、それじゃ…」
朋也(ともや)「ストーリーも、子供向(こどもむ)けの童話(どうわ)みたいで、ぜんぜん悲(かな)しくないし…」
渚(なぎさ)「とっても悲(かな)しいんです」
朋也(ともや)「どこが」
渚(なぎさ)「それは…」
仁科(にしな)「世界(せかい)にたったひとり残(のこ)された女(おんな)の子(こ)のお話(はなし)だから」
仁科(にしな)が答(こた)えていた。
渚(なぎさ)「はい、そうです」
仁科(にしな)「なんとなくわかってきました」
仁科(にしな)「その子(こ)の気持(きも)ちになってみればいいんです」
仁科(にしな)「家(いえ)や学校(がっこう)で、ひとりじゃないんです」
仁科(にしな)「世界(せかい)でひとりきりなんです」
仁科(にしな)「それはとても、悲(かな)しいことですよね」
渚(なぎさ)「はい、とても悲(かな)しいことです」
杉坂(すぎさか)「どんな曲(ま)が合(あ)いそう?」
仁科(にしな)「音楽(おんがく)も、もの悲(かな)しくあるべきです」
仁科(にしな)「使(つか)う曲(きょく)は一曲(いっきょく)だけでいいと思(おも)います」
仁科(にしな)「とても悲(かな)しいピアノ曲(きょく)を一曲(いっきょく)だけ」
仁科(にしな)「それをテーマとして、要所(ようしょ)で流(なが)して、後(あと)は無音(ぶおん)です」
朋也(ともや)「こいつ、俺(おれ)より音響係然(おんきょうかかりぜん)としてるんだけど」
杉坂(すぎさか)「曲(きょく)はどうするの?」
仁科(にしな)「うん…ラヴェルの作品(さくひん)の中(なか)から、いかがでしょう」
さっぱりわからない。
朋也(ともや)「まぁ、おまえのセンスを信(しん)じるよ」
仁科(にしな)「わかりました。それでは少(すこ)し時間(じかん)を下(くだ)さい。合(あ)ったものを探(さが)してみますので」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)、それでいいか?」
渚(なぎさ)「はい。よろしくお願(ねが)いします」
深々(ふかぶか)と頭(あたま)を下(さ)げた。
渚(なぎさ)「後(あと)は、衣装(いしょう)が必要(ひつよう)です」
朋也(ともや)「ああ、そうだったな」
それも幸村(こうむら)に言(い)われるまで気(き)づかなかったことだった。
朋也(ともや)「どうするんだ?」
渚(なぎさ)「はい、それは、自分(じぶん)の手(て)で作(つく)ります」
朋也(ともや)「そんなことできるのか?」
渚(なぎさ)「家庭(かてい)の授業(じゅぎょう)で教(おそ)わっただけですけど…」
渚(なぎさ)「それでもがんばれば、できるんじゃないかと…そう思(おも)います」
朋也(ともや)「前向(まえむ)きなのはいいけどさ…」
朋也(ともや)「あんまり自分(じぶん)ひとりで抱(かか)え込(こ)みすぎるなよ」
朋也(ともや)「家(いえ)だったら、俺(おれ)だって暇(ひま)なんだしさ」
渚(なぎさ)「ありがとうございます」
渚(なぎさ)「でも、こんなこと男(おとこ)の子(こ)に頼(たの)めないです」
朋也(ともや)「そりゃ、そうだろうけどさ…」
早苗(さなえ)「任(まか)しておいてくださいっ」
早苗(さなえ)さんなら、間違(まちが)いなくそう答(こた)えてくれると思(おも)っていた。
帰宅後(きたくご)、早苗(さなえ)さんに相談(そうだん)してみることを、俺(おれ)は渚(なぎさ)に薦(すす)めてみたのだ。
渚(なぎさ)「え…お母(かあ)さん、忙(いそが)しいです」
早苗(さなえ)「大丈夫(だいじょうぶ)です。仕事(しごと)の合間(あいま)を見(み)て、ちょっとずつやりますから」
渚(なぎさ)「でも、時間(じかん)もそんなにないです」
朋也(ともや)「それは、おまえも同(おな)じだろ」
朋也(ともや)「それにおまえは、演劇(えんげき)の練習(れんしゅう)のほうが大事(だいじ)だ。衣装作(いしょうつく)りに時間(じかん)をとられてたら、元(もと)も子(こ)もないじゃないか」
朋也(ともや)「違(ちが)うか?」
早苗(さなえ)「そうですよ、渚(なぎさ)」
早苗(さなえ)「協力(きょうりょく)させてください」
渚(なぎさ)「それでは…お言葉(ことば)に甘(あま)えさせていただきます」
渚(なぎさ)「お母(かあ)さん、よろしくお願(ねが)いします」
渚(なぎさ)はまた頭(あたま)を下(さ)げた。
早苗(さなえ)「はいっ」
こうして、いろんな人(ひと)が動(うご)き始(はじ)めた。
ささやかな夢(ゆめ)を叶(かな)えようと頑張(がんば)ってきた渚(なぎさ)のために。
秋生(あきお)「おぅ、おかえり。俺様(おれさま)の素晴(すば)らしい遺伝子(いでんし)を受(う)け継(つ)ぎし娘(むすめ)と、どっかの馬(うま)の骨(ほね)」
渚(なぎさ)「ただいまです」
朋也(ともや)「ただいま…」
秋生(あきお)「いいものを借(か)りてきてやったぞ。ほら、受(う)け取(と)れ」
オッサンが差(さ)し出(だ)すのは一本(いっぽん)のビデオテープだった。
渚(なぎさ)「なんでしょうか」
秋生(あきお)「演劇(えんげき)を録(と)ったビデオだ。参考(さんこう)になるだろ」
渚(なぎさ)「はい。わたし、演劇(えんげき)見(み)たことないですから、助(たす)かります」
演劇部(えんげきぶ)、部長(ぶちょう)の爆弾発言(ばくだんはつげん)Part2。
秋生(あきお)「そうか、そりゃあ、いいタイミングだったなぁ」
2、3年(ねん)は遅(おそ)かったと思(おも)う。
渚(なぎさ)「ありがとうございます。早速(さっそく)見(み)ます」
秋生(あきお)「よしよし」
秋生(あきお)「おい、小僧(こぞう)、てめぇには何(なに)もない。物欲(ものほ)しそうなツラで立(た)ってんじゃねぇ」
渚(なぎさ)「一緒(いっしょ)に見(み)ましょう、朋也(ともや)くん」
朋也(ともや)「いいのか、ひとりで見(み)なくても」
渚(なぎさ)「ふたりで見(み)たほうがきっと楽(たの)しいです」
渚(なぎさ)「それに朋也(ともや)くんにも研究(けんきゅう)してほしいです。それで、わたしの演技(えんぎ)のダメなところ、指摘(してき)してほしいです」
秋生(あきお)「誉(ほ)めまくれよ、てめぇ」
朋也(ともや)「聞(き)こえてるぞ、本人(ほんにん)に」
渚(なぎさ)「そうですっ、お世辞(せじ)なんて言(い)ってほしくないです。厳(きび)しくお願(ねが)いします」
朋也(ともや)「大丈夫(だいじょうぶ)だ。俺(おれ)はお世辞(せじ)なんて言(い)わねぇよ」
渚(なぎさ)「そうです。朋也(ともや)くん、ハッキリ言(い)ってくれます。すごく勉強(べんきょう)になります」
秋生(あきお)「てめぇ、何様(なにさま)だよ。人(ひと)に意見(いけん)するほど偉(えら)ぇのかよ」
秋生(あきお)「まだ満足(まんぞく)にアレも生(は)えそろってねぇ、ガキのくせによ」
この人(ひと)のアレは何本(なんほん)生(は)えてるのだろう。
渚(なぎさ)「いきましょう、朋也(ともや)くん」
秋生(あきお)「おう、勉強(べんきょう)してきやがれ」
ブラウン管(かん)に映(うつ)し出(だ)された映像(えいぞう)。
それは、まさしく人(ひと)の心(こころ)を揺(ゆ)さぶる劇(げき)だった。
ドラマや、映画以上(えいがいじょう)に、オーバーアクションで、体当(たいあ)たりな演技(えんぎ)。
それが言葉(ことば)では表(あらわ)しきれない思(おも)いを伝(つた)えていた。
もし、生(なま)で見(み)ていたなら、その圧倒的(あっとうてき)な思(おも)いに打(う)ちのめされていただろう。
俺(おれ)も、しっかりと演劇(えんげき)を見(み)たことはなかったから、それは衝撃的(しょうげきてき)な体験(たいけん)だった。
そんなふうに夢中(むちゅう)になっていたため、一緒(いっしょ)に見(み)ていた渚(なぎさ)の存在(そんざい)を忘(わす)れていた。
隣(となり)を見(み)てみる。
渚(なぎさ)「ぐすっ…」
…大泣(だいな)きしていた。
朋也(ともや)「おい、泣(な)いてたら研究(けんきゅう)にならねぇぞ」
渚(なぎさ)「は、はい」
俺(おれ)が渡(わた)したティッシュで涙(なみだ)を拭(ふ)く。
渚(なぎさ)「でも、ものすごく感動(かんどう)してしまったんです」
渚(なぎさ)「なんだか、すごく懐(なつ)かしくて」
朋也(ともや)「おまえ、初(はじ)めて見(み)たんだろ」
渚(なぎさ)「そのはずですけど…」
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「でも、演劇(えんげき)って、こんなにすごいものだったんですね…」
渚(なぎさ)「わたしのなんか、これに比(くら)べたら…ままごとみたいなものです」
朋也(ともや)「ああ、俺(おれ)もそう思(おも)った」
渚(なぎさ)「そ、そうですよね…」
朋也(ともや)「でも、いいんじゃねぇの」
朋也(ともや)「ままごとだってさ、真剣(しんけん)にやれば、それは演劇(えんげき)だろ。観客(かんきゃく)がいるかいないかの違(ちが)いだけだ」
渚(なぎさ)「あ…」
渚(なぎさ)「そうですね…そうかもしれないです」
朋也(ともや)「ああ、だから頑張(がんば)っていこうぜ」
俺(おれ)はリモコンの巻(ま)き戻(もど)しボタンを押(お)した。
晩御飯(ばんごはん)を食(た)べてからも、繰(く)り返(かえ)し、何度(なんど)も見(み)た。
朋也(ともや)「ふわ…俺(おれ)、眠(ねむ)いよ…」
そういえば、昨晩(さくばん)はほとんど寝(ね)ていなかったことを思(おも)い出(だ)す。
渚(なぎさ)「はい、おやすみなさいです」
朋也(ともや)「まだ、見(み)てるのか、おまえ」
渚(なぎさ)「はい。もう少(すこ)しで何(なに)か、ヒントが掴(つか)めそうな気(き)がするんです」
朋也(ともや)「そうか。でも、ほどほどにしとけよ」
渚(なぎさ)「はい。寝不足(ねぶそく)にはならないよう、ほどほどにします」
朋也(ともや)「ああ。じゃあな、おやすみ」
俺(おれ)は退散(たいさん)を決(き)め込(こ)む。
部屋(へや)を出(で)ると、オッサンも自分(じぶん)の部屋(べや)から出(で)てきたところだった。
秋生(あきお)「ちっ、なんだ、こんな夜遅(よるおそ)くまで渚(なぎさ)とラブラブか」
秋生(あきお)「あいつは俺(おれ)のあそこのあれがああなって、生(う)まれてきたんだぞ」
秋生(あきお)「そう考(かんが)えると、どうだ、気色悪(きしょくわる)いだろう」
相変(あいか)わらず何(なに)を言(い)いたいのか、さっぱりわからない。
朋也(ともや)「そういや、オッサン」
秋生(あきお)「なんだ、小僧(こぞう)」
朋也(ともや)「もしかしたら、演劇(えんげき)かもしれない」
秋生(あきお)「何(なに)が」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)がわずかに憶(おも)えていた話(はなし)だよ」
秋生(あきお)「どうして、そう思(おも)う」
朋也(ともや)「ビデオを見(み)て、懐(なつ)かしいと言(い)っていた」
秋生(あきお)「そうか…もう一度(いちど)、話(はなし)の内容(ないよう)を言(い)ってみろ」
俺(おれ)は今(いま)から渚(なぎさ)が演(えん)じようとしている劇(げき)の内容(ないよう)を話(はな)した。
秋生(あきお)「ふん…」
秋生(あきお)「ずばり言(い)おう、小僧(こぞう)」
朋也(ともや)「ああ」
秋生(あきお)「それはきっと、演劇(えんげき)じゃねぇよ」
朋也(ともや)「どうして、わかる」
秋生(あきお)「もし、あいつが昔(むかし)にそういった類(たぐい)の劇(げき)を見(み)ているとしてもだ」
秋生(あきお)「それは、俺(おれ)がすべて把握(はあく)している」
秋生(あきお)「俺(おれ)の記憶(きおく)になければ、それは違(ちが)うってこった」
一緒(いっしょ)にあれだけの時間(じかん)をかけて、物置(ものおき)を探(さが)してくれた人間(にんげん)の言葉(ことば)だ。今更(いまさら)疑(うたが)う気(き)も起(お)こらない。
朋也(ともや)「そうか…」
秋生(あきお)「しかし、なんだ、今(いま)の話(はなし)をあいつは演劇(えんげき)にしようとしてるのか」
朋也(ともや)「そうだが」
秋生(あきお)「おもしろいのか、それ」
朋也(ともや)「………」
何(なに)も答(こた)えられない。
秋生(あきお)「ちっ、まぁ、いい。内容(ないよう)を追究(ついきゅう)する歳(とし)でもねぇな」
朋也(ともや)「ああ、俺(おれ)もそう思(おも)うよ」
秋生(あきお)「せいぜいサポートしてやってくれ」
俺(おれ)の脇(わき)を抜(ぬ)けて、洗面所(せんめんじょ)のほうへ向(む)かっていった。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:26:54
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5月7日
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渚(なぎさ)「それでは、いってきます」
朋也(ともや)「いってきます」
早苗(さなえ)「はい、いってらっしゃい」
秋生(あきお)「おぅ、エンジョイしてきやがれ」
いつものように、二人(ふたり)に見送(みおく)られ、家(いえ)を後(あと)にする。
渚(なぎさ)「わかりました」
登校(とうこう)する生徒(せいと)に混(ま)じって歩(ある)きながら、渚(なぎさ)は話(はなし)を始(はじ)める。
朋也(ともや)「何(なに)が」
渚(なぎさ)「歌(うた)を取(と)り入(い)れたら、今(いま)よりもっとよくなるはずです」
朋也(ともや)「歌(うた)?」
渚(なぎさ)「そうです。ビデオの演劇(えんげき)では、クライマックスで、みんなで歌(うた)ってました」
朋也(ともや)「ああ、そうだったな」
渚(なぎさ)「それをわたしも取(と)り入(い)れたいです」
朋也(ともや)「あれは、出演者(しゅつえんしゃ)全員(ぜんいん)で歌(うた)うからいいんじゃないのか?」
朋也(ともや)「おまえひとりで歌(うた)っても、盛(も)り上(あ)がらないだろ」
渚(なぎさ)「やめておいたほうがいいでしょうか…」
朋也(ともや)「おまえ、歌(うた)には自信(じしん)あるのか?」
渚(なぎさ)「演劇(えんげき)はまだやったことがありません。けど、歌(うた)は音楽(おんがく)の時間(じかん)とかに歌(うた)ったことがあります」
朋也(ともや)「そりゃそうだろう。俺(おれ)だってある」
渚(なぎさ)「ですから、できれば歌(うた)を入(い)れたいです。とても良(よ)くなる予感(よかん)がします」
朋也(ともや)「そっか…まぁ、好(す)きにすればいいと思(おも)うけど」
朋也(ともや)「けどな、劇(げき)が良(よ)くなるとか、そんなこと考(かんが)えなくていいと思(おも)うぜ」
渚(なぎさ)「はい?」
朋也(ともや)「歌(うた)いたいなら、歌(うた)えばいい。俺(おれ)が言(い)いたいのはそれだけだよ」
渚(なぎさ)「わかりました。歌(うた)いたいです。ですから、歌(うた)います」
朋也(ともや)「ああ、歌(うた)え。精一杯(せいいっぱい)な。それが一番大事(いちばんだいじ)だ」
渚(なぎさ)「はいっ」
今(いま)、目(め)の前(まえ)で渚(なぎさ)が演(えん)じている。
手(て)には手作(てづく)りの台本(だいほん)。
演劇(えんげき)のストーリーは、聞(き)いた話(はなし)のまんまだった。
世界(せかい)にひとり取(と)り残(のこ)されてしまった女(おんな)の子(こ)が、ガラクタを集(あつ)めて人形(にんぎょう)を作(つく)りました。
すると、それが動(うご)き出(だ)して、女(おんな)の子(こ)は寂(さび)しくなくなりました。
めでたし、めでたし、と。
実際(じっさい)、割(わ)り当(あ)てられた時間(じかん)は短(みじか)ったから、それぐらいがちょうどいいのかもしれない。
渚(なぎさ)の練習風景(れんしゅうふうけい)を見(み)ながら、ふと、その話(はなし)を初(はじ)めて聞(き)いた時(とき)に覚(おぼ)えた既視感(きしかん)のようなものを思(おも)い出(だ)していた。
記憶(きおく)のどこかにある情景(じょうけい)が渚(なぎさ)の演技(えんぎ)に重(かさ)なるかと期待(きたい)していたが、それもなかった。
そこまで完成(かんせい)していないのだ。
朋也(ともや)(いや…この物語(ものがたり)は、完成(かんせい)しないのだろうな)
そんな予感(よかん)がしていた。
あまりに手(て)がかりが少(すく)なすぎる。
それに、それを探(さが)してるのは俺(おれ)ひとりだ。
渚(なぎさ)はもう、満足(まんぞく)してるじゃないか。
俺(おれ)も、こいつの心配(しんぱい)だけをしていよう。
そして、創立者祭(そうりつしゃさい)を無事(ぶじ)終(お)えたら…
もっと恋人(こいびと)らしいことをして過(す)ごそう。
今(いま)はただ、こうして見守(みまも)っていることが俺(おれ)の役目(やくめ)なのだ。
0
seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:27:33
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5月8日
(
木
)
春原(すのはら)「ライトは、実際(じっさい)に体育館(たいいくかん)に吊(つる)してみるまで、試(ため)すこともできない」
春原(すのはら)「で、それができるのは明後日(あさって)のリハーサルのみ」
春原(すのはら)「やることが全然(ぜんぜん)ないんだけど…」
朋也(ともや)「おまえなんかマシじゃないか」
朋也(ともや)「俺(おれ)のほうは、仁科(にしな)·杉坂(すぎさか)コンビが勝手(かって)にやってくれてるから、自分(じぶん)の存在意義(そんざいいぎ)すら見失(みうしな)いがちだ」
春原(すのはら)「はぁ…張(は)り合(あ)いがないねぇ」
俺(おれ)はじっと、渚(なぎさ)の練習風景(れんしゅうふうけい)を見(み)つめていた。
顧問(こもん)の幸村(こうむら)も、同(おな)じように椅子(いす)に腰(こし)を下(お)ろして、その様子(ようす)を眺(なが)めている。
台本(だいほん)のコピーを手(て)に持(も)ち、たまに間違(まちが)いを指摘(してき)する。
でもそれは、台本(だいほん)を持(も)っていない俺(おれ)たちでも気(き)づくレベルのものだけだ。
渚(なぎさ)の演技(えんぎ)は、演技(えんぎ)を指導(しどう)できるところまでも達(たっ)していないということだった。
けど、それでも…
言(い)われることに何度(なんど)も頷(うなず)いて…
額(ひたい)から汗(あせ)が流(なが)れ出(だ)しても、拭(ぬぐ)おうともせずに懸命(けんめい)に練習(れんしゅう)に打(う)ち込(こ)む姿(すがた)を見(み)ていると…
これが渚(なぎさ)が求(もと)めていた学生生活(がくせいせいかつ)だったんだと…今更(いまさら)ながらに思(おも)えた。
声(こえ)「失礼(しつれい)します」
声(こえ)がして、入室(にゅうしつ)してきたのは、仁科(にしな)·杉坂(すぎさか)コンビ。
渚(なぎさ)「あ、仁科(にしな)さん、杉坂(すぎさか)さん、こんにちは」
渚(なぎさ)「音楽(おんがく)のほう、迷惑(めいわく)かけてしまってますが、どうなりましたでしょうか」
渚自身(なぎさじしん)、気(き)にかかっていたのだろう、俺(おれ)よりも早(はや)く寄(よ)っていった。
仁科(にしな)「こちらです」
仁科(にしな)が手(て)に持(も)ったテープを見(み)せた。
渚(なぎさ)「あ、見(み)つかったんですかっ」
仁科(にしな)「はい」
杉坂(すぎさか)「おかけしますね」
隣(となり)で、杉坂(すぎさか)がラジカセを胸(むね)の前(まえ)まで持(も)ち上(あ)げていた。
ピアノのソロが部室(ぶしつ)に鳴(な)り渡(わた)る。
目(め)を閉(と)じると…一瞬(いっしゅん)だけど、違(ちが)う風景(ふうけい)に立(た)っているような気(き)がした。
渚(なぎさ)「素敵(すてき)です」
うっとりした顔(かお)で渚(なぎさ)が言(い)った。
朋也(ともや)「素敵(すてき)はわかってる。イメージには合(あ)うのか、どうなんだ」
渚(なぎさ)「びっくりするぐらいに、ぴったりです」
仁科(にしな)「よかったです」
仁科(にしな)がにっこりと微笑(ほほえ)む。
仁科(にしな)「この曲(きょく)は、ラヴェルの『マ·メール·ロワ』という作品(さくひん)の曲(きょく)なんです」
仁科(にしな)「『マ·メール·ロワ』とはマザーグースの事(こと)で、いわゆる童話(どうわ)です」
仁科(にしな)「もともとラヴェルの生徒(せいと)だった友人(ゆうじん)の子供(こども)二人(ふたり)に弾(ひ)かせるために、ピアノ連弾(れんだん)曲(きょく)として作(つく)られました」
仁科(にしな)「ラヴェルが幻想的(げんそうてき)な曲(きょく)を多(おお)く作(つく)ったのと、この曲(きょく)が童話(どうわ)を元(もと)にした楽曲(がっきょく)なので、幻想的(げんそうてき)な世界(せかい)に合(あ)うかもしれないと思(おも)って」
春原(すのはら)「今(いま)の英語(えいご)?」
朋也(ともや)「日本語(にほんご)だったろ…」
まぁ、それぐらい理解不能(りかいふのう)。
でも、仁科(にしな)が音楽(おんがく)を大好(だいす)きなことがよくわかった。そんなに熱心(ねっしん)に話(はな)す姿(すがた)を見(み)たことがない。
仁科(にしな)「喜(よろこ)んでもらえてよかったです」
杉坂(すぎさか)「これ、りえちゃんがピアノソロ用(よう)に編曲(へんきょく)し直(なお)したんです」
渚(なぎさ)「えっ?」
杉坂(すぎさか)「譜面(ふめん)だけ書(か)いて、それを知(し)り合(あ)いのピアノが上手(じょうず)な方(かた)に渡(わた)して、弾(ひ)いてもらったんです」
幸村(こうむら)「ほぅ…」
幸村(こうむら)「より、親(した)しみやすくなっとる…」
仁科(にしな)「だとしたら、成功(せいこう)です」
幸村(こうむら)「ふむ…なかなか…できることではない」
渚(なぎさ)「すごいです、仁科(にしな)さんっ」
仁科(にしな)「ありがとうございます」
渚(なぎさ)「それはこちらのセリフです」
渚(なぎさ)「素敵(すてき)な音楽(おんがく)、ありがとうございます」
春原(すのはら)「やったな、岡崎(おかざき)。これで再生(さいせい)ボタンを押(お)す練習(れんしゅう)ができるなっ」
一回(いっかい)やれば十分(じゅうぶん)な練習(れんしゅう)だった。
渚(なぎさ)「曲(きょく)に合(あ)わせて、練習(れんしゅう)してみます」
朋也(ともや)「ああ、そうだな」
渚(なぎさ)「それでは、お願(ねが)いします」
また、練習(れんしゅう)が再開(さいかい)された。
誰(だれ)も居(い)なかったはずの部室(ぶしつ)には、渚(なぎさ)、俺(おれ)、春原(すのはら)、幸村(こうむら)、仁科(にしな)、杉坂(すぎさか)。
いつのまにか、俺(おれ)たちは、こんなにもたくさんの人間(にんげん)と同(おな)じ時間(じかん)を共有(きょうゆう)するようになっていた。
ひたむきに頑張(がんば)り続(つづ)ける渚(なぎさ)と同(おな)じ時間(じかん)を、そばにいて、共有(きょうゆう)して…
そして、みんなで一緒(いっしょ)に喜(よろこ)びを分(わ)かち合(あ)おうと…
そのために。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:28:15
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進めるなら、前に進むべきなんです。
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5月10日
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木曜(もくよう)、金曜(きんよう)と過(す)ぎ、創立者祭(そうりつしゃさい)、前日(ぜんじつ)の土曜(どよう)。
今日(きょう)は午後(ごご)から、体育館(たいいくかん)で明日(あした)のリハーサルが行(おこな)われる。
渚(なぎさ)は朝(あさ)からそのことで頭(あたま)が一杯(いっぱい)で、登校中(とうこうちゅう)でさえ自分(じぶん)の作(つく)った台本(だいほん)から目(め)を離(はな)せないでいた。
朋也(ともや)「おまえな…漢字(かんじ)の書(か)き取(と)りテストじゃないんだから、今更(いまさら)頑張(がんば)っても無駄(むだ)だろ?」
朋也(ともや)「きっと、自然(しぜん)に体(からだ)が動(うご)いてくれるよ」
朋也(ともや)「あれだけ練習(れんしゅう)したんだからな」
この三日(みっか)、ずっとそばにいた俺(おれ)ならそれがわかった。
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「あ…朋也(ともや)くん、何(なに)か言(い)いましたか?」
朋也(ともや)「聞(き)こえてなかったのかよ…」
渚(なぎさ)「ごめんなさいです。もう一回(いっかい)言(い)ってくれますか?」
朋也(ともや)「好(す)きだ」
渚(なぎさ)「ありがとうございます」
真顔(まがお)のまま言(い)って、すぐに台本(だいほん)に目(め)を戻(もど)す。
いつもなら、しばらくは照(て)れたり、ぼぅっとしてくれたりするのに…重症(じゅうしょう)だ。
これはいかん。リラックスさせてあげなければ。
朋也(ともや)「おい、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「え…なにか今(いま)、言(い)いましたか?」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)とエッチなことしたい」
渚(なぎさ)「すみません、後(あと)にしてほしいです」
そう言(い)って、すぐに台本(だいほん)に目(め)を戻(もど)す。
朋也(ともや)(後(あと)だったらいいのか…覚(おぼ)えておこう)
じゃなくて、今(いま)の言葉(ことば)に動揺(どうよう)すらしてくれないとは、本当(ほんとう)に余裕(よゆう)がない証拠(しょうこ)だ。
このままリハーサルに入(はい)ったら、舞台(ぶたい)の上(うえ)で頭(あたま)が真(ま)っ白(しろ)に、なんてことにもなりかねない。
それで自信(じしん)をなくして、明日(あした)の本番(ほんばん)に影響(えいきょう)が出(で)るなんてことになっては目(め)も当(あ)てられない。
どうやって、リラックスさせたものか…。
心を奪う
そう。俺(おれ)の魅力(みりょく)で心(こころ)を奪(うば)ってしまえばいい。
男(おとこ)として、演劇(えんげき)なんかに負(ま)けているなんて、とても屈辱的(くつじょくてき)なことだ。
俺(おれ)は制服(せいふく)の前(まえ)ボタンを外(はず)し、さらにシャツをはだけさせ、素肌(すはだ)を露出(ろしゅつ)させる。
男(おとこ)の色気(いろけ)がむんむんと漂(ただよ)う格好(かっこう)だった。
朋也(ともや)「おい、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「………」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)ってば」
渚(なぎさ)「…はい?」
目(め)がこちらに向(む)く。
俺(おれ)は髪(かみ)をふぁさあと掻(か)き上(あ)げてみせる。
渚(なぎさ)「あの…用(よう)がないなら、集中(しゅうちゅう)したいので…」
男(おとこ)としての魅力(みりょく)が、台本(だいほん)に負(ま)けた…。
朋也(ともや)「あーーーっ!
もう、脱(ぬ)いでやるっ!」
朋也(ともや)「次(つぎ)、隣(となり)見(み)た時(とき)、俺(おれ)が素(す)っ裸(はだか)でも同(おな)じセリフ言(い)えよ、おまえっ」
渚(なぎさ)「えっ?
そんなの驚(おどろ)きますっ」
上着(うわぎ)を脱(ぬ)ぎ始(はじ)めた俺(おれ)を見(み)て、ようやく慌(あわ)ててくれる。
渚(なぎさ)「どうしたんですか、朋也(ともや)くん」
朋也(ともや)「いや、おまえの心(こころ)を奪(うば)おうと思(おも)ってだな…」
渚(なぎさ)「すでに奪(うば)われてます」
朋也(ともや)「あ、そっか」
渚(なぎさ)「はい。そうです」
…台本(だいほん)に目(め)を戻(もど)してしまった。
朋也(ともや)「………」
胸(むね)をはだけた男(おとこ)がひとり。
朋也(ともや)(アホだ…)
大丈夫(だいじょうぶ)なんだろうか、こんなので。
午前(ごぜん)の授業(じゅぎょう)が終(お)わり、放課(ほうか)となる。
三年(さんねん)のほとんどは、真(ま)っ直(す)ぐ帰宅(きたく)することになるが、その他(ほか)の生徒(せいと)は、明日(あした)の創立者祭(そうりつしゃさい)の準備(じゅんび)に入(はい)る。
学祭(がくさい)のような催(もよお)しに、半日(はんにち)しか準備時間(じゅんびじかん)を割(さ)かないというのが、実(じつ)に進学校(しんがくこう)らしい。
人(ひと)の行(い)き交(か)いの激(はげ)しい昇降口(しょうこうぐち)を抜(ぬ)け、俺(おれ)たちは、体育館(たいいくかん)に向(む)けて歩(ある)いていた。
渚(なぎさ)「ああ、心臓(しんぞう)ばくばく言(い)ってます」
春原(すのはら)「渚(なぎさ)ちゃん、いいおまじないを教(おし)えてやるよ」
春原(すのはら)「こうして、手(て)に字(じ)を書(か)いて三回(さんかい)飲(の)み込(こ)むんだよ」
春原(すのはら)が手(て)に書(か)いたのは、三回(さんかい)とも『入』だった。
そんなもの食(く)ってどうなるのだろうか。
渚(なぎさ)「はぁ…それでもおさまらないです」
収(おさ)まるわけない。
春原(すのはら)「じゃあね、観客(かんきゃく)を人(ひと)だと思(おも)わない、というのはどう?」
渚(なぎさ)「何(なん)だと思(おも)えばいいんでしょうか」
春原(すのはら)「そうだねぇ…エイリアン」
間違(まちが)っていないか、それも。
春原(すのはら)「みんな、地球(ちきゅう)を侵略(しんりゃく)しにきたんだ。だから、渚(なぎさ)ちゃんが舞台(ぶたい)で演技(えんぎ)してようが、関心(かんしん)がないんだ」
渚(なぎさ)「でも、関心(かんしん)がないのは困(こま)ります。見(み)てほしいです」
春原(すのはら)「じゃあ、関心(かんしん)はある。渚(なぎさ)ちゃんの演技次第(えんぎしだい)で、地球(ちきゅう)を侵略(しんりゃく)しようか決(き)めようとしてるんだ」
春原(すのはら)「頑張(がんば)らないとダメだろ?」
渚(なぎさ)「ああ、それは、ものすごいプレッシャーですっ」
朋也(ともや)「おまえら、アホアホトークやめぃっ!」
聞(き)いている俺(おれ)のほうまで、頭(あたま)がおかしくなりそうだった。
渚(なぎさ)「アホアホトークじゃないです。真剣(しんけん)に相談(そうだん)に乗(の)ってもらってます」
春原(すのはら)「そうそう、おばあちゃんの知恵袋並(ちえぶくろな)みに博学(はくがく)な僕(ぼく)に嫉妬(しっと)するのはわかるけどさ」
春原(すのはら)の馬鹿袋(ばかぶくろ)、と呼(よ)んでやりたい。
渚(なぎさ)「ああ、でも、なんだか落(お)ち着(つ)いた気(き)がします」
朋也(ともや)「マジかよ…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんの口(くち)の悪(わる)いのを聞(き)いてると、なんかいつも通(どお)りだなって思(おも)えました」
朋也(ともや)「そりゃよかったよ…」
春原(すのはら)の馬鹿(ばか)さ加減(かげん)のおかげだった。
たくさんの生徒(せいと)がパイプ椅子(いす)を並(なら)べていた。
壇上(だんじょう)では、白(しろ)いスクリーンが用意(ようい)されていて、そこに映像(えいぞう)が映(うつ)し出(だ)されていた。
何部(何部)かは知(し)らないが、映写機(えいしゃき)の調子(ちょうし)を見(み)ているようだった。
渚(なぎさ)「ああ、どきどきしてきました…」
朋也(ともや)「おまえ、さっき落(お)ち着(つ)いたって言(い)ってなかったか…」
渚(なぎさ)「すみません。やっぱり、こうしてみなさんががんばってる風景(ふうけい)を見(み)てしまうとダメです…」
渚(なぎさ)「こんなにたくさんの人(ひと)たちが関(かか)わっていて、わたしのために時間(じかん)を割(さ)いてもらって、舞台(ぶたい)に上(あ)がるなんて…」
朋也(ともや)「まぁ、その気持(きも)ちはわかるけどさ…」
朋也(ともや)「でも、おまえのためじゃない。おまえも、この場(ば)を盛(も)り上(あ)げる側(がわ)のひとりだろ?」
渚(なぎさ)「あ、そう言(い)われると、そうです」
渚(なぎさ)「わたしもがんばらないとダメです」
朋也(ともや)「そういうことだよ」
渚(なぎさ)「あ、仁科(にしな)さんと杉坂(すぎさか)さんです」
見(み)ると、こっちに向(む)けて歩(ある)いてくるところだった。
仁科(にしな)「みなさん、こんにちは」
杉坂(すぎさか)「こんにちは」
渚(なぎさ)「はい、こんにちはっ」
仁科(にしな)「緊張(きんちょう)しているようですね」
渚(なぎさ)「はい…舞台(ぶたい)の上(うえ)にあがるなんて、初(はじ)めてですから」
杉坂(すぎさか)「りえちゃん、慣(な)れてるよね」
仁科(にしな)「慣(な)れているといっても、それはヴァイオリンを持(も)ってだから」
仁科(にしな)「何(なに)も持(も)たずに上(あ)がるのは、私(わたし)も初(はじ)めてです」
渚(なぎさ)「緊張(きんちょう)、してますか」
仁科(にしな)「もちろんです」
ヴァイオリンのコンクールでいくつもの受賞歴(じゅしょうれき)がある仁科(にしな)からその言葉(ことば)が出(で)たのは意外(いがい)だった。
渚(なぎさ)「仁科(にしな)さんでも、緊張(きんちょう)するんですね」
仁科(にしな)「誰(だれ)でも、初(はじ)めてのことに挑戦(ちょうせん)するときはそうですよ」
同(おな)じ緊張(きんちょう)した空気(くうき)を共有(きょうゆう)できてか、渚(なぎさ)は幾分(いくぶん)落(お)ち着(つ)けたようだった。
声(こえ)「合唱部(がっしょうぶ)の方(かた)、次(つぎ)なので準備(じゅんび)お願(ねが)いしまーす」
拡声器(かくせいき)を使(つか)った声(こえ)が届(とど)いた。
杉坂(すぎさか)「りえちゃん」
仁科(にしな)「うん」
仁科(にしな)「お互(たが)いがんばりましょうね」
渚(なぎさ)「はいっ」
合唱部(がっしょうぶ)のリハーサルを俺(おれ)たちは見届(みとど)ける。
上手(じょうず)いとか、下手(へた)とかは俺(おれ)たち三人(さんにん)にはわからない。
けど、間違(まちが)いなく、心(こころ)は動(うご)かされた。
それは聞(き)く前(まえ)と、聞(き)いた後(あと)の気分(きぶん)が違(ちが)っていたのだから、間違(まちが)いない。
それを感動(かんどう)と呼(よ)ぶのは簡単(かんたん)な気(き)がしたけど、でも、きっとそうなのだと思(おも)う。
続(つづ)けて、演劇部(えんげきぶ)が呼(よ)び出(だ)された。
渚(なぎさ)「はいっ」
渚(なぎさ)は大(おお)きな声(こえ)で返事(へんじ)をした。
ぴんと背筋(せすじ)を伸(の)ばした姿勢(しせい)で歩(ある)いていく。
春原(すのはら)「いっちょ、やりますか」
朋也(ともや)「ああ」
俺(おれ)と春原(すのはら)はそれを追(お)った。
我(わ)が演劇部(えんげきぶ)の部長(ぶちょう)の後(あと)を。
渚(なぎさ)「ただいまです」
朋也(ともや)「ただいま」
早苗(さなえ)「おかえりなさい」
秋生(あきお)「おぅ、お帰(かえ)り、俺(おれ)たちの愛(あい)の結晶(けっしょう)よ」
秋生(あきお)「ちなみに、てめぇは違(ちが)うぞ」
朋也(ともや)「わかってるよ…」
早苗(さなえ)「練習通(れんしゅうどお)りにできましたか?」
早速(さっそく)リハーサルのことを訊(き)いてくる。
渚(なぎさ)「えっと…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、どうでしたか」
自分(じぶん)では言(い)いにくいのだろう。俺(おれ)に振(ふ)った。
朋也(ともや)「ああ。練習通(れんしゅうどお)り。問題(もんだい)なかったよ」
早苗(さなえ)「それは、よかったです」
秋生(あきお)「さすが俺(おれ)たちの娘(むすめ)だ。明日(あした)にゃタレント事務所(じむしょ)から引(ひ)っ張(ぱ)りだこだな」
朋也(ともや)「さすがにそこまでは」
秋生(あきお)「そうですねって言(い)っておけよ、てめぇはよぅっ!」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんは、そんなこと言(い)わないです」
秋生(あきお)「ああ、わかってるよ…だから、頼(たよ)れるんだろうけどさ…親(おや)としてはだなぁ…」
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)、サインいまのうちにくれますかっ」
朋也(ともや)「親馬鹿(おやばか)だぁ…」
秋生(あきお)「はっ、てめぇだって、自分(じぶん)に娘(むすめ)ができれば、こうならぁ」
朋也(ともや)「絶対(ぜったい)ならねぇよ…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、なると思(おも)います」
朋也(ともや)「どうしてだよ」
渚(なぎさ)「お父(とう)さんに似(に)てるからです」
秋生(あきお)「なにっ…こいつとかっ」
オッサンの目(め)がぎろりと俺(おれ)に向(む)いた。
秋生(あきお)「娘(むすめ)よ…」
渚(なぎさ)「はい」
秋生(あきお)「父(とう)さん、すごくショックだ」
朋也(ともや)「本人前(ほんにんまえ)にして言(い)わんでください」
渚(なぎさ)「だって、ふたりとも口(くち)が悪(わる)いところそっくりです」
渚(なぎさ)「なのに、実(じつ)は優(やさ)しいところとか」
秋生(あきお)「褒(ほ)めるなら、俺(おれ)だけを褒(ほ)めてくれ」
あんた、どんな大人(おとな)だ。
渚(なぎさ)「だから朋也(ともや)くんも、子供(こども)できたら、とても優(やさ)しくしてしまいます」
渚(なぎさ)「とてもいいお父(とう)さんです」
朋也(ともや)「そうかねぇ…」
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)も、きっと優(やさ)しいお母(かあ)さんになります」
早苗(さなえ)「だから、おふたりの子供(こども)はとても幸(しあわ)せですね」
渚(なぎさ)「え…」
朋也(ともや)「………」
ものすごい発言(はつげん)をさらっとされたのは気(き)のせいだろうか…。
渚(なぎさ)「あの、わたし、そんな…泣(な)き虫(むし)ですから…とてもじゃないですけど、なれないです…」
早苗(さなえ)「大丈夫(だいじょうぶ)です。わたしも、泣(な)き虫(むし)ですよっ」
んなことで胸(むね)を張(は)らんでください。
秋生(あきお)「そうだぞ、渚(なぎさ)。要(よう)は、愛(あい)だろ、愛(あい)」
渚(なぎさ)「は、はい…」
秋生(あきお)「だが、てめぇには愛(あい)はなぁーーーーいっ!」
朋也(ともや)「決(き)めつけるなっ」
その晩(ばん)、自分(じぶん)の部屋(へや)にひとりでいると…とんとん、とノックの音(おと)。
朋也(ともや)「はい、どうぞ」
ドアが小(ちい)さく開(ひら)いて、隙間(すきま)から渚(なぎさ)が顔(かお)を出(だ)した。
渚(なぎさ)「もう、寝(ね)ますか?」
朋也(ともや)「いや、まだだけど」
渚(なぎさ)「じゃ、入(はい)っていいですか」
朋也(ともや)「ああ」
体(からだ)を滑(すべ)り込(こ)ませて、ドアを閉(し)めた。
渚(なぎさ)「隣(となり)、いいですか」
朋也(ともや)「ああ」
座布団(ざぶとん)を持(も)ってきて、俺(おれ)の隣(となり)に置(お)くと、その上(うえ)に膝(ひざ)を折(お)って座(すわ)った。
いつもは渚(なぎさ)が寝(ね)ているような時間(じかん)。
少(すこ)しだけ後(うし)ろめたいことをしているような、そんな気分(きぶん)になる。
朋也(ともや)「どうした」
渚(なぎさ)「いえ、別(べつ)にこれといって、用(よう)はなかったんですけど…」
朋也(ともや)「どうせ、興奮(こうふん)して眠(ねむ)れないんだろ?」
渚(なぎさ)「やっぱり…わかりますか」
朋也(ともや)「おまえがぐっすり寝(ね)てたほうが驚(おどろ)くよ、俺(おれ)は」
渚(なぎさ)「そうですよね…昨日(きのう)からずっと緊張(きんちょう)しっぱなしで、迷惑(めいわく)かけてます」
朋也(ともや)「女(おんな)の子(こ)らしくて、俺(おれ)はそういうの見(み)てると楽(たの)しいけどな」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、ヘンです」
朋也(ともや)「ヘンなものか。男(おとこ)ってのはそういうもんなんだよ」
渚(なぎさ)「だと、少(すこ)しはラクになれますけど…」
朋也(ともや)「ああ、目一杯(めいっぱい)緊張(きんちょう)してくれ」
渚(なぎさ)「目一杯(めいっぱい)緊張(きんちょう)してます」
それは確(たし)かなことだと思(おも)う。
今(いま)も少(すこ)し目(め)が潤(うる)んでいるように見(み)える。
じっとその憂(うれ)いだ顔(かお)を見(み)つめていると、キスしたくなってくる。
でも、そんなことをしても今(いま)の渚(なぎさ)にとってはなんの足(た)しにもならないだろう。
俺(おれ)の欲求(よっきゅう)が満(み)たされるだけだ。だから、我慢(がまん)しておく。
明日(あした)の創立者祭(そうりつしゃさい)さえ無事終(ぶじお)われば、いくらでもそうする時間(じかん)ができるはずだった。
渚(なぎさ)「でも、それだけじゃなくて…」
渚(なぎさ)「いろいろと考(かんが)えてしまうんです」
朋也(ともや)「何(なに)を」
渚(なぎさ)「今日(きょう)も、帰(かえ)ってきた時(とき)にすごく思(おも)いました」
渚(なぎさ)「いかに自分(じぶん)が、お父(とう)さんとお母(かあ)さんに愛(あい)されてるかってことです」
渚(なぎさ)「わたし、本当(ほんとう)に愛(あい)されてます」
朋也(ともや)「ああ、わかるよ」
朋也(ともや)「あんな親(おや)、なかなかいないだろうな」
渚(なぎさ)「そうです」
渚(なぎさ)「なのに、です…」
渚(なぎさ)「わたしは、お父(とう)さんとお母(かあ)さんに謝(あやま)れていないことがあるんです」
朋也(ともや)「謝(あやま)る?
なんか悪(わる)いことしたのか?」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「何(なに)をしたんだよ」
渚(なぎさ)「わからないです」
朋也(ともや)「はぁ?」
渚(なぎさ)「それをずっと知(し)りたかったんです…」
渚(なぎさ)「でも、ふたりは教(おし)えてくれないんです」
朋也(ともや)「よくわからないな…」
朋也(ともや)「おまえはどうして、悪(わる)いことをしたって思(おも)うようになったんだよ」
渚(なぎさ)「ふたりが、昔(むかし)の話(はなし)をしてくれないからです」
渚(なぎさ)「わたしの記憶(きおく)にもないような…わたしが小(ちい)さかった頃(ころ)の話(はなし)です」
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「写真(しゃしん)とか…残(のこ)ってるはずなのに、見(み)たこともないです」
渚(なぎさ)「訊(き)いても…いつもはぐらかされて…」
渚(なぎさ)「…だからです」
渚(なぎさ)「わたしに隠(かく)しているということは、それはわたしに気(き)を使(つか)っているということです」
渚(なぎさ)「それぐらいわかります…」
渚(なぎさ)「そういう時(とき)、お父(とう)さん、いつも優(やさ)しくなりますから…」
渚(なぎさ)「きっと、そこにはわたしが謝(あやま)らなければいけないことが…隠(かく)されてるんです」
渚(なぎさ)「わたしは体(からだ)が弱(よわ)いですので…」
渚(なぎさ)「そのことが関係(かんけい)しているんだと思(おも)います」
渚(なぎさ)「わたし、知(し)りたいです」
渚(なぎさ)「知(し)って、謝(あやま)りたいです」
渚(なぎさ)「ずっとそう…思(おも)ってるんです」
朋也(ともや)「………」
──負(お)い目(め)をあいつに背負(せお)わせたくないんだ…
──きっと、あいつはこう思(おも)うだろ…
──自分(じぶん)のせいで、俺(おれ)と早苗(さなえ)は夢(ゆめ)を諦(あきら)めたって…
──でも、あいつ、気(き)づき始(はじ)めてるんだ…
──そういうところには敏感(びんかん)だからな…
オッサンの言葉(ことば)が…次々(つぎつぎ)と思(おも)い出(だ)された。
渚(なぎさ)「…朋也(ともや)くん?」
朋也(ともや)「え…ああ」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、何(なに)か知(し)ってるんですか」
朋也(ともや)「どうして?」
渚(なぎさ)「今(いま)、考(かんが)え事(ごと)、してました」
朋也(ともや)「別(べつ)のことだよ」
渚(なぎさ)「それに…お父(とう)さんとよく夜遅(よるおそ)くに話(はなし)をしてました…」
朋也(ともや)「違(ちが)う。勝手(かって)に決(き)めつけるな」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)ですか」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)に、朋也(ともや)くん、何(なに)も知(し)らないんですか」
朋也(ともや)「………」
渚(なぎさ)「知(し)ってるなら、教(おし)えてほしいです」
もしかして…今(いま)の渚(なぎさ)なら…。
それを受(う)け入(い)れられるんじゃないか。
受(う)け入(い)れた上(うえ)で、前(まえ)に進(すす)めるんじゃないか。
そうも思(おも)えた。
もしそれができるなら、俺(おれ)はそうしてほしかった。
けど、何(なに)も…こんな日(ひ)にそうすることはない。
明日(あした)は創立者祭(そうりつしゃさい)で…渚(なぎさ)の晴(は)れの舞台(ぶたい)で…
渚(なぎさ)が一番目指(いちばんめざ)していた日(ひ)だ。
そんな日(ひ)の前日(ぜんじつ)を、何(なに)も選(えら)ぶことなどない。
朋也(ともや)「あのな、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「おまえは、そういうことに過敏(かびん)になりすぎてる」
朋也(ともや)「落(お)ち着(つ)いて考(かんが)えてみろ」
朋也(ともや)「ふたりが過去(かこ)を話(はな)さない理由(りゆう)なんて、他(ほか)にもいくつだって考(かんが)えられる」
朋也(ともや)「おまえは、自分(じぶん)が悪(わる)いとすぐ思(おも)ってしまうのが癖(くせ)だからな…」
朋也(ともや)「だから、今回(こんかい)も思(おも)い過(す)ごしだよ」
渚(なぎさ)「………」
黙(だま)り込(こ)んでしまった。
渚(なぎさ)「あの、朋也(ともや)くん…」
しばらくして、ようやく口(くち)を開(ひら)いた。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、もう眠(ねむ)いですか」
朋也(ともや)「いや、別(べつ)にそんなことないけど」
渚(なぎさ)「でも、もう寝(ね)たほうがいいと思(おも)います」
朋也(ともや)「………」
今(いま)、ここで話(はなし)を終(お)わらせてしまって…渚(なぎさ)は眠(ねむ)ることができるのだろうか。
心配(しんぱい)だった。
でも、これ以上(いじょう)ふたりでいて…大切(たいせつ)な明日(あした)のために休(やす)めない、というのも避(さ)けたい。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)…」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「ここで一緒(いっしょ)に寝(ね)るか?
布団(ふとん)並(なら)べてさ…」
渚(なぎさ)「…ありがとうございます」
渚(なぎさ)「でも、それは、お父(とう)さんにばれたら、大変(たいへん)なことになりそうですので…」
朋也(ともや)「そうかもしれないけどさ…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、遅(おそ)くまでありがとうございました」
渚(なぎさ)が立(た)ち上(あ)がって、座布団(ざぶとん)を片(かた)づける。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)…」
朋也(ともや)「おまえ、寝(ね)られるのかよ…」
渚(なぎさ)「はい…実(じつ)はさっきからものすごく眠(ねむ)いんです」
渚(なぎさ)「今(いま)、布団(ふとん)に入(はい)ったら、ぱっと眠(ねむ)れそうです」
朋也(ともや)「本当(ほんとう)か…?」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)「と、話(はな)してる間(あいだ)に眠気(ねむけ)が覚(さ)めそうですので、失礼(しつれい)します」
朋也(ともや)「あ、ああ…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、おやすみなさい」
朋也(ともや)「ああ、おやすみ」
音(おと)を立(た)てずにドアを閉(し)めて、渚(なぎさ)は部屋(へや)を後(あと)にした。
朋也(ともや)「………」
大丈夫(だいじょうぶ)なんだろうか、本当(ほんとう)に…。
俺(おれ)は電気(でんき)を消(け)してからも、しばらく起(お)きていることにした。
誰(だれ)かが起(お)き出(だ)してこないか…じっと耳(みみ)を澄(す)ませていた。
………。
どれだけ時間(じかん)が経(た)っただろうか…。
いつまでも続(つづ)く静(しず)けさの中(なか)で、俺(おれ)は眠(ねむ)りに落(お)ちていた。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:28:55
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進めるなら、前に進むべきなんです。
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seagull
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5月11日
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日
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………。
目(め)が覚(さ)めた。
いつの間(ま)にか眠(ねむ)ってしまっていたのか…。
体(からだ)を横(よこ)にするだけで、寝(ね)ないつもりでいたのに…。
時計(とけい)をたぐり寄(よ)せて、顔(かお)の前(まえ)まで持(も)ってくる。
早朝(そうちょう)もいいところだ。
寝起(ねお)き直後(ちょくご)の記憶(きおく)とは変(へん)なもので、ちゃんと寝直(ねなお)そうとした瞬間(しゅんかん)に寒気(かんき)のようなものが全身(ぜんしん)を走(はし)った。
それからようやく気(き)づく。
…俺(おれ)は今(いま)、物音(ものおと)がして目覚(めざ)めたのではなかったのか。
そして、それはすぐに嫌(いや)な予感(よかん)に変(か)わる。
俺(おれ)は体(からだ)を起(お)こした。
でも、この時間(じかん)だったら、パンを焼(や)く支度(したく)に入(はい)っていてもおかしくはない。
だから、そう…きっとオッサンが立(た)てた物音(ものおと)に違(ちが)いない。
そう言(い)い聞(き)かせて、心(こころ)を落(お)ち着(つ)かせた。
ゆっくりと廊下(ろうか)を歩(ある)いていく。
その間(あいだ)、物音(ものおと)は一度(いちど)もしなかった。
俺(おれ)は居間(いま)へと辿(たど)り着(つ)いた。
そこに…小(ちい)さな背中(せなか)があった。
渚(なぎさ)の…背中(せなか)だった。
突(つ)っ立(た)ってる俺(おれ)に気(き)づいて、渚(なぎさ)が振(ふ)り返(かえ)った。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん…」
朋也(ともや)「おまえ、なんだよ…ずっと起(お)きてたのか…」
朋也(ともや)「今日(きょう)は大切(たいせつ)な日(ひ)だろ…なにやってんだよ…」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くん、聞(き)いてください」
床(ゆか)には、いろいろな物(もの)が広(ひろ)げられていた。
それは、アルバムだったり、ノートだったり。
渚(なぎさ)「………」
渚(なぎさ)「知(し)らなかったんです」
聞(き)くのが恐(こわ)かった。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)、何(なに)も考(かんが)えるな」
朋也(ともや)「とりあえず体(からだ)を休(やす)めろ」
朋也(ともや)「俺(おれ)が起(お)こしてやるから」
朋也(ともや)「そうしたら、いつものようにふたりで学校(がっこう)に行(い)こう」
朋也(ともや)「台本読(だいほんよ)みながら、練習(れんしゅう)しながらいこう」
朋也(ともや)「隣(となり)で聞(き)いててやるからさ」
朋也(ともや)「な、渚(なぎさ)」
朋也(ともや)「ほら、部屋(へや)まで連(つ)れていってやるから」
渚(なぎさ)は布団(ふとん)の中(なか)で横(よこ)になっている。
壁(かべ)のほうを向(む)いているので、顔(かお)は見(み)えない。
まだ起(お)きているだろうか…。
寝息(ねいき)は一向(いっこう)に聞(き)こえてこなかった。
だから、俺(おれ)もずっと寝(ね)ずにいた。
家(いえ)を出(で)る寸前(すんぜん)、着替(きが)えをする渚(なぎさ)を部屋(へや)に残(のこ)し、俺(おれ)は廊下(ろうか)に出(で)た。
そこにオッサンが立(た)ちつくしていた。
秋生(あきお)「ちっ…最悪(さいあく)の事態(じたい)じゃねぇか、この野郎(やろう)」
俺(おれ)に気(き)づいて、そう吐(は)き捨(す)てた。
秋生(あきお)「居間(いま)に広(ひろ)げられていたあれはなんだ」
朋也(ともや)「渚(なぎさ)が見(み)つけだしたんだ。俺(おれ)が見(み)つけた時(とき)は手遅(ておく)れだった」
秋生(あきお)「それで、渚(なぎさ)は…」
秋生(あきお)「全部(ぜんぶ)…知(し)っちまったんだろ…」
朋也(ともや)「ああ…」
秋生(あきお)「あいつ…また、学校(がっこう)に行(い)かなくなっちまうのかな…」
壁(かべ)に額(ひたい)を押(お)しつけて、くぐもった声(こえ)で言(い)った。
秋生(あきお)「あんな元気(げんき)にさ…学校行(がっこうい)ってたのにな…」
秋生(あきお)「くそぅ…」
この人(ひと)が、こんなに落(お)ち込(こ)む姿(すがた)を、俺(おれ)は想像(そうぞう)すらできずにいた。
朋也(ともや)「オッサン…」
俺(おれ)はかける言葉(ことば)を探(さが)した。
あんたはいい父親だ
朋也(ともや)「あんたは間違(まちが)いなく、いい父親(ちちおや)だ」
朋也(ともや)「あんたみたいな奴(やつ)…なかなかいねぇよ」
朋也(ともや)「だから時間(じかん)が経(た)てば、あいつもわかってくれる」
朋也(ともや)「けどさ…俺(おれ)と渚(なぎさ)は今日(きょう)のために頑張(がんば)ってきたことがあるんだ」
朋也(ともや)「それだけは達成(たっせい)したい」
秋生(あきお)「ああ…」
秋生(あきお)「そうか、演劇(えんげき)だな…」
秋生(あきお)「叶(かな)えてやってくれ…頼(たの)む」
懇願(こんがん)するようにオッサンは…頭(あたま)を壁(かべ)に擦(こす)らせた。
いつもと変(か)わらない風景(ふうけい)。
同(おな)じように登校(とうこう)する生徒(せいと)にまぎれて、俺(おれ)たちは肩(かた)を並(なら)べて歩(ある)く。
もうそんなことにも慣(な)れてきた頃(ころ)だったのに。
坂(さか)の下(した)で、渚(なぎさ)は足(あし)を止(と)めていた。
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんは知(し)っていましたか」
そして、初(はじ)めて会(あ)った日(ひ)のような顔(かお)で、坂(さか)を見上(みあ)げたまま言(い)った。
あの日(ひ)は、桜(さくら)が舞(ま)っていた。
朋也(ともや)「何(なに)を」
渚(なぎさ)「わたしのお父(とう)さんが役者(やくしゃ)をやっていたこと」
朋也(ともや)「いや…初耳(はつみみ)だけど」
本当(ほんとう)に知(し)らなかった。
渚(なぎさ)「舞台(ぶたい)にたくさん出(で)て、それがテレビで流(なが)れたこともあったんです」
朋也(ともや)「へぇ…」
渚(なぎさ)「お母(かあ)さんは、ずっと中学校(ちゅうがっこう)の先生(せんせい)をしていたんです」
渚(なぎさ)「勉強(べんきょう)を教(おし)えることが大好(だいす)きだったみたいです」
渚(なぎさ)「写真(しゃしん)やビデオで見(み)るふたりはとても幸(しあわ)せそうでした」
渚(なぎさ)「だって、ふたりは夢(ゆめ)を叶(かな)えていたんですから」
渚(なぎさ)「そして、それは、ずっと続(つづ)くはずだったんです」
渚(なぎさ)「わたしさえ…いなければ」
朋也(ともや)「そりゃ違(ちが)う、渚(なぎさ)…」
渚(なぎさ)「聞(き)いてください、朋也(ともや)くん」
渚(なぎさ)「わたしのせいなんです、お父(とう)さんとお母(かあ)さんが夢(ゆめ)を諦(あきら)めたのは」
朋也(ともや)「違(ちが)う、渚(なぎさ)」
朋也(ともや)「あのふたりは、今(いま)だって幸(しあわ)せなはずだ…」
渚(なぎさ)「夢(ゆめ)は…諦(あきら)めてしまいました」
渚(なぎさ)「違(ちが)いますか」
朋也(ともや)「いや…それはそうかもしれないけど…」
朋也(ともや)「でも、渚(なぎさ)…」
朋也(ともや)「………」
続(つづ)ける言葉(ことば)が見(み)つからなかった。
渚(なぎさ)「そして、今(いま)、わたしは…」
渚(なぎさ)「ふたりの夢(ゆめ)を犠牲(ぎせい)にして…自分(じぶん)の夢(ゆめ)だけ叶(かな)えようとしてます」
渚(なぎさ)「ひどい子供(こども)です」
渚(なぎさ)「恩知(おんし)らずです」
渚(なぎさ)「朋也(ともや)くんにも、そうです」
渚(なぎさ)「わたしの夢(ゆめ)を叶(かな)えるために…たくさんの時間(じかん)を無駄(むだ)にさせてしまってます」
朋也(ともや)「俺(おれ)は好(す)きでやってきたんだよ…」
朋也(ともや)「何(なに)を今更(いまさら)言(い)ってんだよ…」
渚(なぎさ)「………」
ああ…また…
ここからやり直(なお)しなのだろうか…。
いろんなことがあって、ふたりでここまで来(き)たのに…。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)…」
渚(なぎさ)「はい…」
朋也(ともや)「ここまでやってきたんだ…」
朋也(ともや)「後少(あとすこ)しじゃないか。頑張(がんば)ろうぜ…」
渚(なぎさ)「………」
朋也(ともや)「ほら、いこう」
その手(て)を取(と)って…俺(おれ)は坂(さか)を登(のぼ)り始(はじ)めた。
春原(すのはら)「ふわぁ…」
春原(すのはら)「すんげぇ眠(ねむ)いんですけど」
朋也(ともや)「おまえ、緊張感(きんちょうかん)ってものがないのな」
春原(すのはら)「だって、こんな早(はや)くに来(く)るなんて平日(へいじつ)だってないぜ?」
春原(すのはら)「しかも日曜(にちよう)だし…」
朋也(ともや)「おまえ、照明係(しょうめいがかり)だろ。しっかりしろ」
春原(すのはら)「眠(ねむ)たさのあまり、ライトのオンオフを連射(れんしゃ)して、ディスコみたいにしちまいそうだよ…」
朋也(ともや)「やめてくれ」
春原(すのはら)「いや、それぐらい眠(ねむ)いんだってば」
朋也(ともや)「じゃ、俺(おれ)と代(か)わるか?
再生(さいせい)ボタン押(お)すだけだし」
春原(すのはら)「いや…」
春原(すのはら)「そっちはそっちで、眠(ねむ)たさのあまりDJばりのスクラッチをやって、観客(かんきゃく)を踊(おど)らせてしまいそうだよ…」
朋也(ともや)「安心(あんしん)しろ。テープデッキにそんな機能(きのう)はない」
春原(すのはら)「まぁ、それだけ寝惚(ねぼ)けてるってこった…」
春原(すのはら)「でも、ま、渚(なぎさ)ちゃんのためだ…頑張(がんば)るかぁ」
渚(なぎさ)「………」
春原(すのはら)「渚(なぎさ)ちゃん?」
渚(なぎさ)「…え?
あ…はい」
春原(すのはら)「いや、別(べつ)に用(よう)はないんだけどさ…」
渚(なぎさ)の様子(ようす)の違(ちが)いに気(き)づいて、春原(すのはら)は目(め)が覚(さ)めたようだった。
春原(すのはら)(渚(なぎさ)ちゃん、なんかヘンじゃないか…?)
俺(おれ)の隣(となり)に来(き)て、そう訊(き)いた。
朋也(ともや)(ちょっとな…)
春原(すのはら)(どうしたんだよ…)
朋也(ともや)(おまえはいつも通(どお)りでいてくれ…後(あと)は俺(おれ)がなんとかするから)
春原(すのはら)(………)
不服(ふふく)そうな目(め)を俺(おれ)に向(む)けた後(あと)、すぐいつもの顔(かお)に戻(もど)って、渚(なぎさ)の元(もと)に寄(よ)っていく。
春原(すのはら)「おまじない、教(おし)えてやるよ、渚(なぎさ)ちゃん」
少(すこ)しだけ春原(すのはら)に助(たす)けられた気持(きも)ちになる。
校内(こうない)は、一般客(いっぱんきゃく)と生徒(せいと)ですでに賑(にぎ)わい始(はじ)めていた。
俺(おれ)たちは、体育館(たいいくかん)の端(はし)で、発表会(はっぴょうかい)の開幕(かいまく)を待(ま)っていた。
朋也(ともや)「いいか、渚(なぎさ)…」
朋也(ともや)「余計(よけい)なことを考(かんが)えるな。劇(げき)のことだけ考(かんが)えてろ」
朋也(ともや)「ほら、もう少(すこ)しで出番(でばん)じゃないか」
朋也(ともや)「緊張(きんちょう)してきただろ?
台本(だいほん)、見返(みかえ)しておかなくていいのか」
朋也(ともや)「ほら、台本(だいほん)」
渚(なぎさ)が握(にぎ)っていた台本(だいほん)を胸(むね)の前(まえ)まで持(も)ち上(あ)げて見(み)せる。
朋也(ともや)「終(お)わったら、打(う)ち上(あ)げしような」
朋也(ともや)「俺(おれ)はおまえとふたりきりがいいんだけどな」
朋也(ともや)「まぁ、早苗(さなえ)さんは可愛(かわい)いから呼(よ)ぶとしよう」
朋也(ともや)「ちっ、まぁ、オッサンも呼(よ)んでやるか」
朋也(ともや)「な、四人(よたり)で打(う)ち上(あ)げしよう」
朋也(ともや)「だからさ、今(いま)はやれることをしようぜ」
渚(なぎさ)「はい…」
ようやく、渚(なぎさ)が台本(だいほん)を開(ひら)き、目(め)を落(お)とし始(はじ)めた。
体育館(たいいくかん)の壇上(だんじょう)では、今(いま)、まさに幕(まく)が開(ひら)こうとしていた。
観客(かんきゃく)も集(あつ)まりつつある。
俺(おれ)はその中(なか)に、オッサンと早苗(さなえ)さんの姿(すがた)を探(さが)した。
演技(えんぎ)に入(はい)る前(まえ)に、渚(なぎさ)の前(まえ)に現(あらわ)れかねない。
ふたりの励(はげ)ましは、渚(なぎさ)をさらに傷(きず)つけると思(おも)ったから、それは避(さ)けたかった。
ふたりの言葉(ことば)は、本当(ほんとう)に優(やさ)しいだろうから。
けど、遠目(とおめ)にはふたりを見(み)つけることができない。
朋也(ともや)「いいか、渚(なぎさ)、台本読(だいほんよ)んでろよ。俺(おれ)、ちょっとここ離(はな)れるから」
渚(なぎさ)「………」
返事(へんじ)はなかったけど、聞(き)こえていたはずだ。
渚(なぎさ)を春原(すのはら)に任(まか)せて、俺(おれ)はふたりを探(さが)しに向(む)かった。
館内(かんない)では見(み)つからず、外(そと)へと出(で)た。
人混(ひとご)みの中(なか)、ようやくその姿(すがた)を見(み)つけることができた。
朋也(ともや)「早苗(さなえ)さん」
早苗(さなえ)「あ、岡崎(おかざき)さん。助(たす)かりました。迷子(まいご)になってたんです、わたし」
実(じつ)に早苗(さなえ)さんらしかった。
見(み)たところ、ひとりのようだった。
朋也(ともや)「オッサンと一緒(いっしょ)に来(こ)なかったんですか」
早苗(さなえ)「はい。先(さき)に行(い)ってろ、と言(い)われました」
朋也(ともや)「来(く)る気(き)あんのかな…」
早苗(さなえ)「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。渚(なぎさ)の晴(は)れ舞台(ぶたい)です。見逃(みのが)すはずがないです」
俺(おれ)は来(こ)ないんじゃないかと思(おも)い始(はじ)めていた。
よく考(かんが)えてみればいい。
今(いま)、渚(なぎさ)の前(まえ)に現(あらわ)れるのは、辛辣(しんらつ)な過去(かこ)を突(つ)きつけるのと同(おな)じことだ。
なら、早苗(さなえ)さんは、今朝起(けさお)きたことを知(し)らないということだろうか。
早苗(さなえ)さんの顔(かお)をじっと見(み)つめる。
早苗(さなえ)「……?」
どちらにしても、劇(げき)が無事(ぶじ)に終(お)わるまでは、早苗(さなえ)さんも、渚(なぎさ)に会(あ)わせるべきでない。
今(いま)は、初(はじ)めて観客(かんきゃく)を前(まえ)にして劇(げき)を演(えん)ずるというプレッシャーが、今朝(けさ)知(し)った事実(じじつ)の悲(かな)しみの深(ふか)さに勝(まさ)ることを祈(いの)るだけだった。
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)はどこにいますか」
朋也(ともや)「あいつ今(いま)、集中(しゅうちゅう)して、台本読(だいほんよ)んでますから、そっとしておいてやりましょう」
早苗(さなえ)「そうですね」
朋也(ともや)「その代(か)わりと言(い)っては、なんですけど、俺(おれ)が案内(あんない)しますよ」
朋也(ともや)「とりあえずは、模擬店(もぎてん)でも」
俺(おれ)は立(た)ち並(なら)ぶ屋台(やたい)を指(さ)さした。
早苗(さなえ)「はいっ」
早苗(さなえ)さんは笑顔(えがお)で頷(うなず)いてくれた。
演劇部(えんげきぶ)の演目(えんもく)開始時間(かいしじかん)、その寸前(すんぜん)を見計(みはか)らって、俺(おれ)は早苗(さなえ)さんを体育館(たいいくかん)へと連(つ)れてきた。
渚(なぎさ)の姿(すがた)はもう館内(かんない)になかった。控(ひか)え室(しつ)となっている用具庫(ようぐこ)で、衣裳(いしょう)に着替(きが)えて出番(でばん)を待(ま)っているはずだった。
朋也(ともや)「それでは、俺(おれ)もやることありますから」
早苗(さなえ)「はい、とても楽(たの)しかったです。ありがとうございました」
朋也(ともや)「こっちこそ」
早苗(さなえ)「あ、磯貝(いそがい)さんっ」
早苗(さなえ)「挨拶(あいさつ)してきますね」
すぐに知人(ちじん)を見(み)つけて、早苗(さなえ)さんは寄(よ)っていった。
この分(ぶん)だと、渚(なぎさ)を励(はげ)ますために探(さが)し始(はじ)める、ということもなさそうだった。
俺(おれ)も急(いそ)いで、その場(ば)を後(あと)にする。
春原(すのはら)「岡崎(おかざき)、おまえ、どこほっつき歩(ある)いてやがったんだよ」
朋也(ともや)「悪(わる)い」
春原(すのはら)「ほら、もう、渚(なぎさ)ちゃん、袖(そで)で控(ひか)えてる」
春原(すのはら)「頼(たの)むぜ、音響係(おんきょうがかり)さん」
朋也(ともや)「おまえこそな、照明係(しょうめいがかり)さん」
春原(すのはら)「任(まか)せておけって」
それだけの会話(かいわ)を交(か)わして、春原(すのはら)とも別(わか)れる。
俺(おれ)は控(ひか)え室(しつ)から、小(ちい)さな階段(かいだん)を上(のぼ)り、舞台(ぶたい)の袖(そで)までやってくる。
そこに衣裳姿(いしょうすがた)の渚(なぎさ)がいた。
朋也(ともや)「渚(なぎさ)っ」
声(こえ)をかける。
振(ふ)り返(かえ)ったその顔(がお)に向(む)けて、親指(おやゆび)を立(た)てて見(み)せた。
どんな表情(ひょうじょう)も作(つく)らずに、渚(なぎさ)は頷(うなず)いた。
そして、前(まえ)を向(む)いた。
拍手(はくしゅ)が起(お)きている。
出番(でばん)だった。
舞台袖(ぶたいそで)から渚(なぎさ)が歩(あゆ)み出(で)た。中央(ちゅうおう)へと歩(ほ)を進(すす)める。
早苗(さなえ)さん手作(てづく)りの衣装(いしょう)が、ここからでもとてもよく映(は)えて見(み)えた。
会場(かいじょう)がその少女(しょうじょ)の登場(とうじょう)に活気(かっき)づく。
黄色(きいろ)い声(こえ)も飛(と)ぶ。
俺(おれ)の背中(せなか)からも、どこのクラスにあんな可愛(かわい)い子(こ)が居(い)たんだ、という実行委員(じっこういいん)たちの話(はな)し声(ごえ)も聞(き)こえてきた。
誇(ほこ)らしかった。
渚(なぎさ)が一礼(いちれい)する。
同時(どうじ)にライトが落(お)ちた。
そして光(ひかり)の中(なか)に、ひとりの少女(しょうじょ)が浮(う)かび上(あ)がった。
じっと、立(た)ちつくしていた。
………。
……。
………。
長(なが)い間(あいだ)、黙(だま)ったままでいた。
演出(えんしゅつ)かと思(おも)っていた観客(かんきゃく)も、あまりに長(なが)い沈黙(ちんもく)に、異変(いへん)を感(かん)じ取(と)る。
やがてそれは、どよめきとなって、館内(かんない)に広(ひろ)がり始(はじ)めた。
朋也(ともや)「………」
俺(おれ)はじっと、光(ひかり)の中(なか)の少女(しょうじょ)を見(み)つめていた。
演(えん)じてくれ…渚(なぎさ)。
俺(おれ)は祈(いの)った。
──わたしのせいなんです、ふたりが夢(ゆめ)を諦(あきら)めたのは…
──そして、今(いま)、わたしは…
──ふたりの夢(ゆめ)を犠牲(ぎせい)にして…自分(じぶん)の夢(ゆめ)だけ叶(かな)えようとしてます…
渚(なぎさ)の口(くち)が小(ちい)さく動(うご)いた気(き)がした。
…そんなことできないです。
そう読(よ)みとれた。
そして、渚(なぎさ)は…泣(な)き始(はじ)めた。
ずっと、堪(た)えていた涙(なみだ)が溢(あふ)れだした。
しゃくり上(あ)げ、子供(こども)のように泣(な)いた。
それは今(いま)まで見(み)た中(なか)で、一番辛(いちばんつら)い泣(な)き方(かた)だった。
人(ひと)の夢(ゆめ)を犠牲(ぎせい)にして生(い)きる自分(じぶん)。
そんな現実(げんじつ)を突(つ)きつけられ、どうしていいかわからない辛(つら)さ。
支(ささ)えとなるすべてを失(うしな)った辛(つら)さだった。
俺(おれ)はもう見(み)てられなくなって…顔(かお)を伏(ふ)せた。
やっぱり、駄目(だめ)だった…。
ずっと頑張(がんば)ってきたのに…。
声(こえ)「夢(ゆめ)を叶(かな)えろ、渚(なぎさ)ああぁーーーーーーーーっ!」
怒声(どせい)が、体育館(たいいくかん)にこだました。
聞(き)き覚(おぼ)えのある声(こえ)。
朋也(ともや)「オッサン…」
俺(おれ)は袖(そで)のカーテン越(こ)しに、その姿(すがた)を探(さが)した。
それは入(い)り口(ぐち)に逆光(ぎゃっこう)を背負(せお)ってあった。
館内(かんない)すべての注目(ちゅうもく)を集(あつ)めて。
秋生(あきお)「渚(なぎさ)あぁぁーーーーっ!」
秋生(あきお)「馬鹿(ばか)か、おめぇはーーーっ!」
秋生(あきお)「子(こ)の夢(ゆめ)が親(おや)の夢(ゆめ)なんだよっ!」
秋生(あきお)「おまえが叶(かな)えればいいんだっ!」
秋生(あきお)「俺(おれ)たちは、おまえが夢(ゆめ)を叶(かな)えるのを夢見(ゆめみ)てんだよっ!!」
秋生(あきお)「俺(おれ)たちは、夢(ゆめ)を諦(あきら)めたんじゃねぇっ」
秋生(あきお)「自分(じぶん)たちの夢(ゆめ)をおまえの夢(ゆめ)にしたんだっ!」
秋生(あきお)「親(おや)とはそういうもんなんだよっ!」
秋生(あきお)「家族(かぞく)ってのは、そういうもんなんだよっ!」
秋生(あきお)「だから、あの日(ひ)からずっと…」
秋生(あきお)「パン焼(や)きながら、ずっと…」
秋生(あきお)「俺(おれ)たちは、それを待(ま)ちこがれて生(い)きてきたんだよ!」
秋生(あきお)「ここでおめぇが挫(くじ)けたら、俺(おれ)たちゃ落(お)ち込(こ)むぞ、てめぇーーっ!」
秋生(あきお)「責任重大(せきにんじゅうだい)だぞ、てめぇーーっ!!」
秋生(あきお)「早苗(さなえ)、居(い)るんだろ、どこかに!
おめぇも言(い)ってやれぇっ!」
………。
少(すこ)しの間(あいだ)の後(あと)…
早苗(さなえ)「渚(なぎさ)ーっ!
がんばれーっ!」
早苗(さなえ)さんの声(こえ)が観客席(かんきゃくせき)の中(なか)から聞(き)こえてきた。
呼ぶ
早苗(さなえ)さんの励(はげ)ましは、なんだか的外(まとはず)れだった。
けど、それに便乗(びんじょう)しない手(て)はない。
朋也(ともや)「俺(おれ)たちも、同(おな)じだぞ、渚(なぎさ)っ!」
朋也(ともや)「春原(すのはら)や俺(おれ)ができなかったことを、今(いま)、おまえが叶(かな)えようとしてくれてるんだっ!」
朋也(ともや)「わかるかっ、俺(おれ)たちの挫折(ざせつ)した思(おも)いも、おまえが今(いま)、背負(せお)ってんだよっ!」
朋也(ともや)「だから、叶(かな)えろ、渚(なぎさ)っ!」
怒鳴(どな)りつけた。
渚(なぎさ)が…顔(かお)をあげる。
もう泣(な)いていなかった。
真(ま)っ直(す)ぐに…虚空(こくう)を見据(みす)えていた。
…連(つ)れていってくれ、渚(なぎさ)。
この町(まち)の願(ねが)いが、叶(かな)う場所(ばしょ)に。
渚(なぎさ)が、胸(むね)に手(て)を当(あ)てた。
それは、最初(さいしょ)の台詞(せりふ)を言(い)う時(とき)。
物語(ものがたり)が始(はじ)まる。
冬(ふゆ)の日(ひ)の、幻想物語(げんそうものがたり)が。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:30:57
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2009-05-23 15:42
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世界(せかい)に、雪(ゆき)が降(お)り始(はじ)めた。
急(いそ)がないといけなかった。
僕(ぼく)は見(み)あたる最後(さいご)のガラクタを拾(ひろ)い上(あ)げると、それを背(せ)の袋(ふくろ)に入(い)れ、家路(いえじ)を急(いそ)いだ。
扉(とびら)を開(あ)ける。
いつものように、彼女(かのじょ)がそこにいた。
僕(ぼく)に気(き)づいて、目(め)をこっちに向(む)けた。
ゆっくりと腕(うで)を広(ひろ)げる。
その動作(どうさ)はひどく遅(おそ)かった。
僕(ぼく)は寄(よ)っていって、その腕(うで)の中(なか)に収(おさ)まる。
…すごく冷(つめ)たくなってるよ…。
僕(ぼく)は首(くび)を振(ふ)る。そんなことはどうだっていいんだ。
時間(じかん)がないんだ。
…なにもできなくて、ごめんね…
僕(ぼく)は首(くび)を振(ふ)る。
ずっと、こうして彼女(かのじょ)の腕(うで)に包(つつ)まれていたかったけど、そうしているわけにもいかなかった。
僕(ぼく)はその腕(うで)を抜(ぬ)ける。
…もう、いくの?
僕(ぼく)は頷(うなず)く。
…そばにいてほしいよ。
…ずっと、ふたりでいよ。
うん。そのためになんだ。
そのために、僕(ぼく)はいくんだ。
これから先(さき)も、ずっとふたりでいられるように。
彼女(かのじょ)の寂(さび)しげな表情(ひょうじょう)…
それを振(ふ)りきって、僕(ぼく)は表(おもて)に出(で)た。
積(つ)み上(あ)げられたガラクタの山(やま)の前(まえ)までやってくる。
そして、今日(きょう)拾(ひろ)ってきたガラクタをその上(うえ)にそっと載(の)せる。
もう、なんの形(かたち)かわからない。
もう、なんの形(かたち)でもない。
最後(さいご)のガラクタを載(の)せた途端(とたん)、片側(かたがわ)が、がらがらと音(おと)をたてて崩(くず)れた。
僕(ぼく)はうなだれる。
ガラクタを拾(ひろ)ってきては、積(つ)み上(あ)げていくだけ。
それの繰(く)り返(かえ)し。
もし…
心(こころ)から願(ねが)うことで、ガラクタたちが形(かたち)になっていくんだとしたら…
僕(ぼく)ひとりじゃ無理(むり)なんだ…。
だって、僕(ぼく)は…
人(ひと)じゃなかったから。
手(て)を見(み)る。
四角(しかく)くて、ざらついた指(ゆび)…。
僕(ぼく)こそが、願(ねが)いにより作(つく)り出(だ)されたガラクタ人形(にんぎょう)。
もう、どこにも行(い)けないのだろうか。
この場所(ばしょ)から。
…そばにいてほしいよ。
…ずっと、ふたりでいよ。
今(いま)聞(き)いた彼女(かのじょ)の言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)す。
それが、もう…
もう、何(なに)もしなくていいから…と言(い)っているようで辛(つら)かった。
悲(かな)しかった。
泣(な)きたかった。
なんて、無力(むりょく)なんだろう。
僕(ぼく)は空(そら)を見上(みあ)げる。
この世界(せかい)が、彼女(かのじょ)を苦(くる)しめているのだ。
ずっと、この世界(せかい)は、彼女(かのじょ)に過酷(かこく)だけを強(つよ)いてきた。
ずっと、ひとりきりで居(い)させて…
ふたりになって寂(さび)しくなくなったと思(おも)ったら、彼女(かのじょ)を動(うご)けなくして…
ああ…
僕(ぼく)は吠(ほ)えるように、体(からだ)を反(そ)らせた。
ぎぎぎと瓦礫(がれき)をすり合(あ)わせたような嫌(いや)な音(おと)がした。
…泣(な)いて…いるの?
彼女(かのじょ)の声(こえ)がした。
ぎぎぎ。
彼女(かのじょ)がゆっくりと歩(ある)いてきて、そして、僕(ぼく)の背中(せなか)を抱(だ)いた。
…どうしたの…?
ぎぎぎ。
…悲(かな)しいことを…思(おも)いだした…?
ぎぎぎ。
…違(ちが)うよね…
…この世界(せかい)が…悲(かな)しいんだよね…
ぎ…。
…遠(とお)くへいく?
………。
…目指(めざ)してた場所(ばしょ)までふたりでいく?
………。
…ふたりで…
…ここから歩(ある)いて…。
………。
…いろんなものがあって…
…楽(たの)しくて…
…温(あたた)かな場所(ばしょ)…
…そこまで。
………。
…きみは…
…そうしたいんだよね?
………。
僕(ぼく)は…もう、泣(な)くのはやめて、前(まえ)を向(む)いていた。
そうしたい。
僕(ぼく)は、力強(ちからづよ)く頷(うなず)いていた。
…じゃ…いこう。
雪(ゆき)が降(お)り積(つ)もって、この大地(だいち)が雪原(せつげん)に変(か)わる前(まえ)に。
長(なが)い、旅(たび)の始(はじ)まり。
遠(とお)い…記憶(きおく)の中(なか)にある場所(ばしょ)までの。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:32:36
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渚(なぎさ)「続(つづ)きを思(おも)い出(だ)しました」
朋也(ともや)「あん?
なんのことだ」
渚(なぎさ)「お話(はなし)の続(つづ)きです」
朋也(ともや)「聞(き)かせてくれ」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)「女(おんな)の子(こ)と人形(にんぎょう)は、その世界(せかい)を出(で)ることにしたんです」
朋也(ともや)「どうして」
渚(なぎさ)「人形(にんぎょう)は、ずっと遠(とお)くに、別(べつ)の世界(せかい)があることを知(し)っていたからです」
渚(なぎさ)「そこは、人(ひと)がたくさんいる、温(あたた)かな世界(せかい)です」
渚(なぎさ)「だから、ふたりは、今(いま)の寂(さび)しい世界(せかい)を抜(ぬ)け出(だ)すことを誓(ちか)って、旅(たび)に出(で)ます」
朋也(ともや)「それで…どうなるんだ」
渚(なぎさ)「はい…」
渚(なぎさ)「長(なが)い旅(たび)をして、その先(さき)で…」
朋也(ともや)「その先(さき)で?」
渚(なぎさ)「歌(うた)を歌(うた)います」
朋也(ともや)「歌(うた)?」
渚(なぎさ)「はい。歌(うた)です」
朋也(ともや)「マジかよ…」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)です。ですから、劇(げき)の最後(さいご)にわたしが歌(うた)ったのは合(あ)っていたんです」
渚(なぎさ)「ちゃんと、話(はなし)の続(つづ)きになっていたんです」
朋也(ともや)「いや、でもさ…」
渚(なぎさ)「はい」
朋也(ともや)「その女(おんな)の子(こ)、だんご大家族(だいかぞく)は歌(うた)わないだろ、さすがに」
渚(なぎさ)「それはわたしの趣味(しゅみ)です」
朋也(ともや)「知(し)ってるよ。それ以外(いがい)、考(かんが)えられるか」
朋也(ともや)「おまえ、ちゃんと劇(げき)が出来(でき)ていたのにさ…最後(さいご)にあれ歌(うた)うから、みんなひっくり返(かえ)ってたぜ?」
朋也(ともや)「感動(かんどう)が台無(だいな)しだ」
渚(なぎさ)「でも、微笑(ほほえ)ましいと思(おも)いました」
朋也(ともや)「そりゃそうかもしれないけどさ…」
朋也(ともや)「…ま、いいか」
朋也(ともや)「最高(さいこう)の出来(でき)だったよ、おまえの劇(げき)」
渚(なぎさ)「本当(ほんとう)ですか?」
朋也(ともや)「ああ、俺(おれ)はお世辞(せじ)は言(い)わねぇよ。知(し)ってるだろ」
渚(なぎさ)「はい、知(し)ってます」
渚(なぎさ)「だから素直(すなお)に喜(よろこ)びます」
渚(なぎさ)「えへへ」
屈託(くったく)なく笑(わら)う渚(なぎさ)。
悲(かな)しみは乗(の)り越(こ)えられただろうか。
オッサンの言葉(ことば)を信(しん)じて。
それとも、まだまだこれからだろうか。
でも今(いま)は、この余韻(よいん)に浸(ひた)っていよう。
一(いっ)ヶ月(げつ)、頑張(がんば)ってきたんだからな。
朋也(ともや)「なぁ、渚(なぎさ)」
渚(なぎさ)「はい」
渚(なぎさ)がこっちを向(む)く。
俺(おれ)はその顔(かお)に自分(じぶん)の顔(かお)を近(ちか)づけた。
声(こえ)「何(なに)しようとしてんだ、てめぇ」
殺気(さっき)を帯(お)びた声(こえ)。
渚(なぎさ)「あ、お父(とう)さん」
何(なに)をされようとしていたかも気(き)づいていない渚(なぎさ)が、後(うし)ろを向(む)いた。
秋生(あきお)「おめぇ、今(いま)、渚(なぎさ)にキスしようとしてただろ」
秋生(あきお)「いいか、こいつは、俺(おれ)のあそこから飛(と)び出(で)たものが、巨大化(きょだいか)して出来上(できあ)がったんだぞ」
秋生(あきお)「どうだ、そう考(かんが)えると、気色悪(きしょくわる)くてキスできまい」
この人(ひと)のあそこは実(じつ)に神秘的(しんぴてき)だ。
秋生(あきお)「つーわけで、夕飯(ゆうはん)だ。打(う)ち上(あ)げも兼(か)ねてるからな、飲(の)んで食(く)って騒(さわ)ぐぜ」
渚(なぎさ)「はい、とても楽(たの)しみです」
渚(なぎさ)「いきましょう、朋也(ともや)くん」
朋也(ともや)「ああ」
こうして、辛(つら)さや悲(かな)しみ、喜(よろこ)びまでも、すべて詰(つ)め込(こ)んだような一日(いちにち)が終(お)わった。
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seagull 最后编辑于 2009-08-03 14:33:13
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